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ユドヨノ政権下の10年において、統計から捕捉できる、この国で起きている大変化、それは進学率の上昇である。世界銀行統計に基づいて、ユドヨノ政権が発足した2004年と今年2014年の進学率変化を見てみたい。
(http://data.worldbank.org/indicator/SE.SEC.ENRR)
初等教育 2004年 91% → 2014年 92%
中等教育 2004年 63% → 2014年 83%
高等教育 2004年 17% → 2014年 32%
植民地時代の教育政策が極めて貧弱であったことから、インドネシア政府は独立以来、初等教育の普及、義務教育化を進めてきた。その成果もあって、初等教育就学率は就任時において既に91%と高い水準にあったが、特筆すべきは、中等教育、高等教育進学率の高い伸びで、とりわけ高等教育に関しては、この10年間でほぼ倍増している。ちなみに高等教育進学率32%という数字は、日本でいえば1970年代頃の水準である。
ユドヨノ大統領自身も教育を重視してきたと自負している。独立記念日の前日8月16日付け「ジャカルタ・ポスト」紙に掲載された寄稿のなかで、彼は以下のようにその成果を誇っている。
発足当初から、教育と福祉は、我が政権の政策、事業において最も高い優先順位を占めてきた。教育は貧困を減らし、中間層を拡大し、21世紀の現代インドネシアを建設する最も適切な方策なのである。(中略)
政府は貧困層子弟のための革新的奨学金制度を開始した。授業料を免除し、月60万ルピア(6千円)の奨学金を給付する。これまでに22万人の生徒が選ばれ、彼らは学業でも学業以外でもめざましい活躍を成し遂げている。(中略)
雇用の主要課題の一つが労働者の49%が初等教育しか受けていないことである。私の任期を終えるにあたってユニバーサル中等教育プログラムを立ち上げることができて嬉しく思っている。これにより、私たちの子どもの世代は、高校卒業までの12年間を義務教育とする制度で学べるようになれば、と願っている。(中略)
さらに大学レベルの高等教育進学を奨励したい。すでに19歳世代の30%以上が大学で学ぶようになっており、この進学率は10年間で倍増した。
しかし、ここでも大統領の「自画自賛」に対して、異議を唱える意見がある。上記大統領寄稿と同日(8/16付け)「ジャカルタ・ポスト」紙でイナ・パーリナ記者は大統領の議論には重大な欠落があると論じている。
記者は、大統領が教育で成果があった根拠として各種統計を引用していることに対して、2009年度国際学習到達度調査(PISA)において、調査65カ国中57位であったこと、数学・科学に至っては64位であったことをあげて、質の面でインドネシアの教育は大きな問題があり、改善が行われていないことを指摘している。それゆえに、大学の進学率が倍増したと大統領が胸をはっても、その大学の中味がピンからキリまであって、国際水準から言って大学とはいえないようなものもあるというのである。
近年インドネシアの大学では、その質を国際水準に引き上げるために、各種学会の奨励、教員再研修等が行われているが、なかなか改革が成果をあげていないというのが実情である。やはりコップには、半分の水しか入っていないのだろうか。