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国際問題コラム「世界の鼓動」

香港:”lose-lose”状態のキャメロン首相

賛助会員 春海 二郎

(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)

10月2日付のWall Street Journal (WSJ) のサイトに “Cameron’s Silence on Hong Kong“(キャメロンが香港について沈黙している)という記事が出ています。前日(10月1日)、バーミンガムで開かれた保守党大会におけるキャメロンの演説の中で香港の状況に関する言葉が全くなかったということを話題にしている。WSJによると、キャメロン演説ではイラク、アフガニスタン、イスラム国、EUなど外交問題にからむテーマもかなりカバーされていた。例えば次のようなくだりです。

歴史の中でも最も危機的な状況において、人々は我々の国旗(ユニオン・フラッグ)が翻るのを見てきた。そしてその旗が何のためにあるのかをみんなが知っていた。それは自由であり、正義であり、正しいことのために立ち上がるということであったのだ。

When people have seen our flag in some of the most desperate times in history, they have known what it stands for. Freedom. Justice. Standing up for what’s right.

なのに「なぜキャメロン氏は、香港については正しいことのために立ち上がることがないのであろうか?」(Why isn’t Mr. Cameron standing up for what’s right when it comes to Hong Kong?)というのがWSJの疑問であるわけです。

WSJによると、香港で大デモがあり、ロンドンの中国大使館前では3000人もの人が集まって連帯集会を開いたにもかかわらず、キャメロンの口から香港のことが出たことはまったくなかった。

香港など語るに値しないという意味なのか?

Didn’t they warrant at least a mention?

香港問題については、ニック・クレッグ副首相が、在英中国大使を呼んで英国政府が香港のデモ隊の側に立っている(we are on your side)と伝えるつもりである、と語ったそうなのですが、WSJは

それは手始めということだ。英国政府はかつての植民地(香港)には、そのようなことどころではない借りがあるはずだ。

That’s a start, but the British government owes its former colony far more than that.

として、1984年の共同宣言において、香港返還後は2047年までは、言論と集会の自由について現在の制度が維持されること、万一中国がこの義務に違反した場合は英国側にこれを遂行させる義務があることが決められているではないか、とWSJは主張しています。つまり現在の状況に沈黙することは英国側の義務違反ではないかと言っている。

これから中国政府の出方によっては天安門事件の再現という事態になりかねない。中国は外国からの批判に極めて敏感に反応するのだから、キャメロン首相はアメリカ、EU、国連などに対して香港の民主化を働きかけることによって、天安門事件の再現という事態が防がれることにもなると言っている。

一方、Guardianなどが伝えるところによると、ハンプシャーにある化学メーカーのChemring社が過去4年間で18万ポンド(約3000万円)相当の催涙ガスを香港の警備当局に輸出していたことを伝えている。この報道の出どころはBBCのDaily Politicsという番組なのですが、Chemring社に輸出許可を与えていたことについてハモンド外相は、あくまでも合法的な輸出であり、英国が輸出しなくても海外のどこかの企業がやっていたはずだ、と言っている。

2014年10月7日 up date

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