NPO法人 アジア情報フォーラム

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国際問題コラム「世界の鼓動」

最近の台湾政局とこれからの中台関係

中国依存強い台湾経済

Q 台湾と中国の経済関係だが、貿易や投資で台湾は中国に大きく依存している。台湾は中国に取り込まれているのではないか。

池田 台湾は、経済的に中国に依存しているといえる。民進党の陳水扁政権は、政経分離で経済関係を進めていた。陳水扁の時は、政治的には完全に対立していたが、経済的には、台湾の中国依存は始まっていた。それが馬英九政権になってから、さらに強まっている。現在、輸出では中国に対する依存度が42~43%であり、相当大きい数字である。

投資については、台湾の対外投資の6~7割が中国に向けたものである。基本的に中国への依存の大きさは、簡単には変えるのは困難だが、台湾の経済を、もう少し日本、アメリカ、ヨーロッパに向ける努力が求められている。今、馬英九はTPPに入りたい意向を示している。TPPを含め、台湾を経済的に、日本やアメリカに近い方向に持っていく必要性は高まっている。

日台の絆が映画に

Q 東日本大震災の時には、台湾から200億円に上る世界一の義援金が寄せられた。これは、99年の台湾中部地震や09年の台風被害の時に、日本が援助したことへの返礼の意味もあるだろうが、ほかに何か理由はあったのか。

池田 東日本大震災後の日本への台湾の姿勢についてだが、この背景には、台湾中部の震災の時に、日本が最初に救急隊や援助隊を出したこともあるが、全体としては台湾人の親日感の表れだと思う。台湾の義援金は、特別に国民党政権が音頭を取って集めたものではない。

たしかに馬英九も積極的に義援金を呼びかけたが、200億と言われている義援金の大半は、民間の人々が自発的に出した浄財である。3・11の震災当時、台湾の人が作った和歌がある。「かつての日『吾が国』と呼びし土地なれば この災害の身に沁みていたし」というものだ。かつては日本人だったという意識が、ある年齢層にはある。一部だろうが、若い人の中にもある程度、受け継がれているようだ。それは、今回のひまわり学生運動の時、占拠した議場で学生たちが台湾人が作った最近の映画『KANO』の上映会をしたことで分かる。「KANO」の「KA」は、台湾南部の嘉義という阿里山の麓の町を指し、「NO」は農業で、嘉義農林学校が舞台になっている。

日本が統治していた戦前に、同校に、日本人と一般の台湾人と現地人の三者からなる野球部を作った。台湾からは甲子園に1校しか出場できなかったが、大変な努力の末に、昭和6年、同校が甲子園に出て、準優勝した実話をもとにしている。これは台湾の野球史では有名な話である。日本でも、この映画は、来年、上映されるということだ。

課題山積の民進党

Q 私は台湾で育ち、終戦後に引き揚げてきて、81歳になった。今でも台湾時代の小学校の同窓会をしている。民進党にはしっかりしてほしいが、リーダーが不在なのか。

池田 民進党がこれからどういうようにカムバックしていくのか、まだよく分からない面はある。民進党は、馬英九と総統選を争った蔡英文という女性政治家がトップの党主席である。

今まで党主席を務めていた蘇貞昌は最近辞任した。今度の学生運動は、基本的には民進党とも距離を置いて、既成政党の支援はないことを打ち出すことで、一般の市民からの支持が強くなった経緯がある。

前総統・陳水扁は台湾人の意識、台湾アイデンティティを高めた上では功績があったと思う。しかし、最後に彼が汚職で捕まったことは、民進党のダメージにつながっている。今後の民進党の課題は「独立綱領」の扱いを含め、中国との距離のとり方をどうするか、という点にある。

(本稿は雑誌「新国策」9月号への寄稿を転載したものです)

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2014年9月18日 up date

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