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今日のところ、中国としては、総合的に見て、国民党政権と馬英九が一番望ましいと考えているようだ。前の総統選挙(2012年)の時、中国は非常に露骨に選挙干渉を行った。台湾のビジネスマンの多くは、家族も一緒に中国へ赴任している。彼らが台湾に帰って投票をするために、飛行機を特別にアレンジをしたり、飛行機代を安くして、国民党に投票するように仕向けた。中国の馬英九政権に対する傾斜ぶりは、当時も今もあまり変化はない。
今まで中国・台湾の交流は、あくまでも一種の窓口機関同士の交流だった。これは日台間では国交がないので、交流協会(日本側)と亜東関係協会(台湾側)を窓口にしているのに似ている。
ところが、最近は、中台間は、経済だけではなく政治分野についても話し合いを広めようとの動きが出てきた。今年2月、国民党の大陸委員会・王郁琦氏は南京を訪れて、中台間で初の閣僚級会議が行われた。特段、この会議に見るべき内容はなかったようだが、政治面で中台間で議論をするプロセスが始まったといえる。
今回の学生による抗議活動は、従来の単なる経済・人的往来だけではなくて政治面でも中台間で関係が進むことに対する反発や危機意識があった。
台湾の人たちを対象にした台湾の現状についてのアンケートによれば、85%ほどの圧倒的多数の人々が現状維持派である。統一でもなく、独立でもなく、今のままの台湾の状況を望んでいる。もし独立を言えば、何が起こるかよく分かっているからだ。中国の国内法には「反国家分裂法」があり、台湾が独立分離しようとすれば、武力を行使することを謳っているし、実際に武力行使をする可能性が高い。
1996年には、台湾海峡ミサイル危機があった。はじめて行われた民主的選挙で、独立派と目される李登輝氏が台湾総統選有利という報を受けて、中国は台湾・基隆沖などにミサイルを撃ち込んだ。それに対し、アメリカは空母インディペンデンスとニミッツの2隻とイージス艦を台湾海峡に急派した。この時は、中国はそれ以上、何もすることができず、引っ込むしかなかった。
しかし、その後、毎年、中国は軍事費を増強してきた。その結果、中国と米国+台湾の軍事バランスは様変わりした。これについては、アメリカも頻繁に報告書を出して警告を行っている。
アメリカも、台湾の独立については、中国を刺激し過ぎないように、公然とした独立論は抑える姿勢をとってきた。民進党の陳水扁政権に対するアメリカの対応は、急速な独立の方向をとること自体を牽制してきた。日本も今までのところ、「台湾独立ということについては支持しない」と、アメリカに似た姿勢をとっている。
ちなみに、今、現状維持以外の選択肢として中国と統一したいと考える台湾の人は、数%しかいない。それに比し、独立したいと考える人の数は少しずつ着実に増えている。とくに若い人たちの間では、この傾向はますます強まっている。
台湾の法的地位について言うなら、日本も米国も中国の主張に同意していない。中国は「台湾は中国の一部」と主張する。日本は日中共同声明において、この中国の主張に「理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項の立場を堅持する」と表明しているが、これは中国の主張への同意ではない。また米国は中国の主張を「ACKNOWLEDGEする」と述べているが、これも同意ではない。