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国際問題コラム「世界の鼓動」

最近の台湾政局とこれからの中台関係

池田 維(理事長)

わが国にとって中国の軍事的脅威が高まるなか、台湾の動きと今後の帰趨が重要性を増している。台湾では、今年3月、立法院を占拠した学生運動をきっかけに、世論は、中国への傾斜を強めてきた馬英九政権の舵取りに、危機感と警戒感を高めている。

今日の東アジア情勢を俯瞰すると、北朝鮮の情勢は別にして、尖閣をめぐる、東シナ海、および南シナ海を中心に緊張関係が高まりつつある。その主たる理由は、中国の海洋進出、領土拡張主義にある。

焦点の東シナ海と南シナ海に跨がる形で位置しているのが台湾であり、地政学的に、台湾は東アジアにおける戦略上の要衝の地である。

これまで中国は、台湾を統一することは、「核心的利益」にかかわる問題と述べてきた。中国の意図は、台湾を統一することにある。

ただ、最近、台湾では、学生運動をきっかけとして中国に対する警戒感が強まっている。さらに、これに対する台湾の一般市民の反応を見る限り、今の台湾の政局は、中国の希望する方向には進んでいない、といって良いだろう。

学生運動のインパクト

台湾の学生の抗議活動(ひまわり運動)が始まったのは、今年3月18日で、24日間にわたって台湾の立法院の議場を占拠した。台湾の歴史において前代未聞のことである。

学生たちが国会の議場を占拠することは違法行為なので、直ちに強制排除されても仕方がない行為だったが、台湾国内の反応は違った。全国の大学の学長たちが連名で「学生達と政府の当局者は、話し合いによって解決すべきだ」とする宣言文を発表し、社会全体に、学生を強く非難する論調は見られなかった。

本来であれば、政権が学生たちを強く非難するところだが、ここ1~2年ほど、馬英九総統に対する支持率は12~13%ほどと低迷しているため、馬英九自身もあまり強い対応はとれなかったのだろう。

今回の学生運動の特徴は、既成の政党が直接かかわっていないという点である。私は、外務省に入って最初に赴任したのが蒋介石政権下の台湾で2年間を過ごした。また、交流協会の代表として3年半、陳水扁・馬英九政権下で駐在した経験があるので、台湾の学生について一般的イメージがある。彼らは、全体としてまじめに勉強するが、ノンポリで政治的活動はしない、というものだった。そうした学生たちがこういう挙に出たことは、台湾社会全体に非常に強いインパクトを与えたと思う。

台湾の一般市民は、学生たちの行動に理解と支持を示した。そして、学生たちの呼びかけに応じて、台北市を中心に大変大きなデモが行われた。当局側の発表で11万人、学生側の発表で50万人、マスコミ報道を総合しても、30~40万人の人達が集まった。

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2014年9月18日 up date

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