NPO法人 アジア情報フォーラム

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国際問題コラム「世界の鼓動」

インドネシア語、世界へ(?)

インドネシア語圏の奥行き

 上述した第10回会議の威勢のいい論文の数々から、どうやら今、インドネシア語には勢いがあるのは推測しえるが、一体、世界でどれくらいの人々が「インドネシア語」を話しているのか。簡単な問いのようでいて、これに答えるのは、なかなか難しい。多言語国家ゆえに生じるその難しさを、豪州の言語学者・作家ジェニファー・リンゼーの「テンポ」誌寄稿(2012年12月2日付)から説明したい。

 リンゼーによれば、その回答振りは、インドネシア語をどう定義するかによって変わってくる。「広義のインドネシア語」定義を採るならば、つまり冒頭で述べた通りムラユ語(マレー語)を土台として整備されたインドネシア語をマレー語とは同一言語とみなすならば、この言語はマレーシア国民の3分の2、かつインドネシア国民の85%が流暢な話者であり、その人口は2.1億人に達し、世界において中国語、英語、スペイン語、アラビア語、ロシア語に継ぐ言語人口を擁するのである。

 もし「狭義のインドネシア語」定義、すなわちインドネシアにおいて国語として定められている言語に限るなら、まずマレーシアやブルネイの話者は除外される。それでも多言語国家インドネシアにおける「インドネシア語話者」には、依然として様々な定義が想定しうる。

 たとえば①インドネシア語を「母語」とする人、②インドネシア語を家庭で日常的に使っている人、③インドネシア語を話せる(と回答した)人、といった具合だ。

ここで筆者なりに補足すると、①は物心ついた時からインドネシア語を話し血肉化した人であるが、②はジャワ語やスンダ語のような地方・民族言語を母語とするも、別の母語を話す人と結婚して、家庭では夫婦間のコミュニケーションや育児に第二の言語としてインドネシア語を用いる人も含まれるようになる。こうした家庭で生まれた子どもは①カテゴリーになることが想定される。

逆にインドネシア語を流暢に話せる①カテゴリーの人であっても、インドネシア語とは異なる地方・民族言語をしゃべる地域に移住し、そこで家庭をもち、その地方言語を用いてローカルな環境に溶け込んで暮らしているならば、②カテゴリーで問われると、「インドネシア語話者」には含まれなくなる。そして、インドネシア語を母語とせず、家庭でも話さなくとも、学校教育やメディアを通じてインドネシア語を理解し、公共の場で使っている人ならば、③カテゴリーでは、「インドネシア語話者」としてカウントされる。

 ちなみに、インドネシア語の普及状況を時系列的に統計数値を捉えるのは難しい。というのは、リンゼーの解説によれば、上記で触れた①~③カテゴリーは1990年の国勢調査の際、国民の言語について実際に問われた項目であるが、2000年の国勢調査では言語を問う項目が設定されていない。2010年調査では更に変更があり、②のみが質問項目として設けられていたという。

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2013年11月25日 up date

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