NPO法人 アジア情報フォーラム

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国際問題コラム「世界の鼓動」

インドネシア・プサントレン(寄宿イスラム教育)とつながる意味

日本ならではの貢献

2012年から3年間、様々なプサントレンを訪問してきた。イスラム近代教育の最優秀教育機関とされイスラム界の指導者を多く輩出してきたプサントレン・ゴントール、第四代大統領アブドゥルラフマン・ワヒッドの出身校にして寛容なイスラムのあり方を説くプサントレン・トゥブイレン、そして1.2万人の全寄宿生に無料で教育を施し自活的な生活を実践させるプサントレン・ヌルル・イマン。いずれの学校でも指導者たちが一様に口にしたのは欧米世界からプサントレンがテロの温床と見られていることへの不満であり、素直にプサントレンのあり様を見てほしいという訴えだった。

さらに彼らが語ったのは、東日本大震災で日本が示した秩序、勤勉、清潔感、助け合いの精神はまさに「イスラム的価値観」のお手本であり、日本は「イスラム無きイスラム社会」、というものだった。日本の実情が彼らの見方の通りなのか否かはとりあえず置いておいて、欧米社会に根強いイスラム嫌悪に毒されることなくイスラムを理解してほしい、日本ともっと交流したいという願いは確かなものであると感じる。

プサントレン・ヌルル・イマンヌルル・イマンでは日本語教師がおらず、周辺地域にも日本人を見かける機会はほとんどない。にもかかわらず、80人の寄宿生たちが日本語クラブを結成して自主的に日本語を学んでいる。その一人が日本映画上映に先立ち、たどたどしいながらも懸命に日本語で歓迎スピーチを述べて、仲間たちから声援の歓声を受けていた。「今度数時間かけてジャカルタに出かけて、日本語能力試験に挑戦します」とニコニコ語る彼の言葉に、日本語能力試験を実施する側の責任の重さをひしと感じた。

多宗教国家インドネシアの教育を底支えするプサントレンのなかで先覚的な指導者たちは、他宗教、国際社会と共存していく道を若者たちに教えたいと考え、そのために日本を始めとする海外諸国との交流プログラムを強化しようとしている。こうした動きに呼応し、将来のある若者たちに夢を見ること、見続けること、そのために努力することの大切さを実感してもらう。我々のプサントレンへの日本文化出前事業が、そのささやかな第一歩とならんことを願っている。

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2015年6月22日 up date

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