NPO法人 アジア情報フォーラム

お仕事のご依頼・お問い合わせ

講演依頼、コラム執筆、国際交流企画など、ご相談は無料です

国際問題コラム「世界の鼓動」

インドネシア・プサントレン(寄宿イスラム教育)とつながる意味

賛助会員 小川 忠

(筆者は国際交流基金のジャカルタ事務所長として独自に情報発信をしている)

6月18日、イスラム教徒としての自覚と連帯意識が高まる断食月(ラマダン)が始まった。日の出から日の入りまで飲食を断ち、空腹と渇きをともに耐えることで、イスラム教徒の一体感が醸成される。

連帯意識、一体感と書いたが、実はインドネシア第二のイスラム組織ムハマディヤは、最大組織ナフダトゥル・ウラマーの影響力が強い政府宗教省とは異なる判断基準をとっていたため、昨年は断食月の開始が一日早かった。

今回は政権交代もあり、宗教大臣も変わったがゆえに、ムハマディヤ指導部は政府との協調路線に転じ、調整がうまくいったゆえ、ラマダン開始が統一されることになった。このようなエピソードからも、この国のイスラム内部には、軽視できない多様性があるのをうかがい知ることができる。

1万2千人がやってきた日本映画上映 

これから一カ月、イスラム教徒ならずともインドネシアという国にとってイスラムはいかなる意味を有するのか、考える機会が増える時期となる。1970年代末以降インドネシア社会に、「イスラム意識覚醒」「イスラム化現象」の巨大な波がおし寄せている。この国の政治、経済、文化に影響をおよぼすイスラム化現象が進むなか、日本・インドネシア間の文化交流を企画立案する立場にあって、イスラム有識者との関係を強化し深化させていくことが重要課題となっている。そうした課題取り組みの一つとして、2011年の赴任以来、イスラム系教育機関、すなわち国立イスラム大学有力校、プサントレン(イスラム寄宿舎)において対話、日本紹介事業を展開している。

出前上映会最近の例をあげると、さる6月5日の夜、ジャカルタから車で2時間ほど南に下った西ジャワ州ボゴール郡にあるイスラム寄宿舎プサントレン・ヌルル・イマンにて映画『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』の出前上映会を開催した。全寄宿生がやって来て、学校側によればその数は1万2千人!ふだんは午後9時就寝のところ校長先生の許可もあり、この日は午後11時まで夜更かし。自分たちと同世代であろう愛媛の高校生たちの成長物語を、爆笑したり、ほろっとしたりしながら、楽しんでくれた。(写真)

ハビブ・ムハンマッド校長によれば、このプサントレンはイスラム教育とともに、近代科学教育、外国語・国際理解教育の両立に力を入れているとのこと。

世界最多イスラム教徒人口を擁するインドネシアで、イスラムの教えを学ぶ若者たちが、日本、そして国際社会とつながろうと努力していることは、世界の未来に大きな意味を持つのではないだろうか。

今回はインドネシア独特の教育機関プサントレンと関係を強化していくことが含意するものは何かを考えてみたい。

1 2 3 4
2015年6月22日 up date

賛助会員受付中!

当NPOでは、運営をサポートしてくださる賛助会員様を募集しております。

詳しくはこちら
このページの一番上へ