NPO法人 アジア情報フォーラム

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国際問題コラム「世界の鼓動」

アジアインフラ投資銀行と日本

さて、本題のAIIB 参加問題であるが、ここまで述べてきたとおり、伝統的援助ドナー(日本、世界銀行、ADB等)と中国との間に援助に関する理念、方法に大きな違いがあることが分かる。 中国政府高官はAIIB の運営に関し「西側諸国のルールが最善とは限らない。」と述べるとともに、AIIB はADB や世界銀行よりも迅速な意思決定を重んじる考えも示したと伝えられている。国際機関としては想像し難いことであるが、仮に理事会が常設されず、中国人総裁の下で中国人が太宗を占める在北京の本部事務局が運営を仕切ることとなると、上に述べたような中国式の運営が行われることになるかもしれない。例えば、融資対象事業の環境に対するインパクト調査が行われなかったり、地元住民への影響に関する調査が十分行われなかったりすると、時間は大いに短縮され、スピーディーな処理が可能になるが、一方で、杞憂であってほしいが、北京その他の大都市のような大気汚染が生じたり、影響を受けた住民の生活が益々困窮するような事態が生じかねない。

最後に気になる点をもう一つ挙げておきたい。援助プロジェクトは準備段階から工事の完成まで、さらには借款資金の返済までを考えると30~40年の長丁場であり、これを円滑に遂行するには、援助資金を出す側、受ける側、実際に工事を担当する企業、実施を支援するコンサルタントなどすべての関係者が共通の目的のために力を合わせていくことが必要である。とくに援助資金を出す側と受ける側は、プロジェクトの全行程にわたっての当事者であり、お互いの信頼に基づいた関係を築いていく事が求められる。現在、南シナ海スプラトリー諸島で中国が行っている大規模な埋め立て工事はその意味において大きな問題をはらんでいる。この動きに懸念を示すフィリピン、ベトナムはいずれもAIIB 参加を表明しており、将来借り手になるかもしれない。この両国に限らず、多くの参加国が新銀行のリーダーである国に信頼感とは逆の不安感、猜疑心、敵対心をもつとすれば、果たして融資活動が円滑に進むかどうか甚だ疑問である。

もう一度原点に立ち返って考えると、アジアの更なる発展を実現させるにはインフラの整備は非常に重要であり、そのための資金を確保することが必要であることは論を俟たない。また、これまで中国の援助が他の伝統的援助供与機関と異なり、途上国にとって負担となる条件も課さずに迅速に行われたことで、途上国側が評価するという事例もいろいろあったと思われる。中国は世界一の外貨準備を背景に巨額の開発資金を提供しようというのであるから、これを有効に活用する方策が実施できれば世界経済全般にとってもプラスとなる。

理想論的に言えば、目指す方向は中国の豊富な資金を現行援助体制への追加的、補完的資金として捉え、これを日本の高度な技術および約半世紀にわたる途上国援助の実績に基づくノウハウを組み合わせることによってアジア諸国の経済発展に寄与し、更に世界経済の活性化に資する、ということである。これは理想論であるだけに現実に移行させようとすると簡単ではない。現実論としては、AIIB の運営、特に国際的基準に見合うガバナンス確立に関して何とか合意を探り、その上で理想に向けてメンバー国が協力していくということではないか、と考える。

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2015年5月31日 up date

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