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▽冷え切る対中関係
金正恩氏は今、対ロ接近を図りつつある。ことし11月には、側近の崔竜海党書記が金正恩氏の特使として訪ロし、プーチン大統領と会談した。訪中していない金正日氏が先に訪ロする可能性がある。
中国の習近平国家主席は7月、韓国を訪問し、朴槿恵大統領と会談した。中国の最高指導者が北朝鮮より韓国を先に訪問したのは初めてで、北朝鮮には衝撃的な出来事だった。中朝首脳は共同声明で双方は共同声明で「朝鮮半島での核兵器開発に断固として反対する」と表明した。これは事実上、北朝鮮の核開発への否定だった。
さらに問題は中韓首脳にこれ以上の論議があったかどうかだ。つまり、韓国による朝鮮半島の統一を中国が容認したかどうかだ。
中国は、北朝鮮を緩衝地帯ととらえて、北朝鮮を支援してきた。中国は今も、この戦略的方針を変えておらず、北朝鮮を見捨てることはないとの見方が支配的だ。
だが、最近、別の見方も出ている。それは中国が緩衝地帯として北朝鮮だけでなく、朝鮮半島全体をとらえているというのだ。つまり韓国が北朝鮮を吸収して統一しても、朝鮮半島全体の緩衝地帯としての位置づけは変わらないと考えるようになったというのだ。
もし、そうだとすれば、中国は韓国による南北統一を容認したことになる。
そうであれば、金正恩氏が中国からロシアに急接近してきている理由もうなずける。 だが、そうなれば、北朝鮮はますます核開発に力を入れることになる。
北朝鮮は今月18日、国連で北朝鮮に対する人権侵害の非難決議が採択されたことに反発し、核実験での対抗をちらつかせた。
北朝鮮の経済はテイクオフ直前だとの見方もある。日本との間で、拉致問題に動いた狙いは、日本からの資金を獲得することにあるが、その資金はテイクオフのためのものだという。そのためにも核開発を急ぎ、本格的な経済改革に向けた安定をえたいとされる。
だが核開発には国際社会からの厳しい制裁を覚悟しなければならない。特に中国が本格的に制裁に踏み切れば、北朝鮮への打撃ははかりしれない。
日米との関係改善の展望もなく、国連、中国をはじめ国際社会から追い詰められていく北朝鮮に残されたカードは、核しかないだろう。金正恩氏がこの苦境をどう乗り越えるか、正念場を迎えている。