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国際問題コラム「世界の鼓動」

「正念場の北朝鮮」――3年目の金正恩政権の行方――

会員 安尾 芳典

2011年12月に金正日総書記が死去し、金正恩氏への後継体制がスタートしてから3年。今、北朝鮮は大きな岐路に立っている。

金正恩氏に突きつけられているのは、国際社会の反対を押し切って核開発を継続するのか。そして冷え込む対中関係への対応だ。

わずか29歳で北朝鮮の最高指導者となった金正恩氏。スイス留学経験から、父親の故金正日総書記とは異なり、柔軟な政権運営をし、核開発などの軍事路線からの転換を図るのではないかと、当初米国などは期待していた。

また当時は10代だったことから、叔母の金慶喜氏やその夫の張成沢国防副委員長を後見役として、実質的には集団指導体制を敷くのではないかと思われていた。

だが金正恩氏は、2012年末に弾道ミサイル発射を行ったのに続き、12年2月には核実験に踏み切り、政権基盤を強化した。

そして13年末には張成沢国防副委員長を粛清・処刑し、集団指導体制ではなく、独裁的体制を強めた。強硬路線だった。

一方で柔軟路線もとった。金正恩氏が政権を握ってから、北朝鮮は金正日政権時代よりも大きく変貌した。

 

▽変貌遂げる社会

その象徴が携帯電話の普及だ。閉鎖的とされる北朝鮮で携帯電話は今、200万台を超えた。平壌の街では、携帯電話をしながら歩く市民をよく見かける。

日本人などの外国人が入国の際にも、海外の携帯電話の持ち込みも自由になった。それどころか、SIMカードを有料で貸しており、SIMカードを入れ替えれば北朝鮮から自分の持っている携帯電話で国際電話もできる。かつては、空港で携帯電話は取り上げられ、出国の際に返却していたのとは様変わりだ。

平壌は今、建設ラッシュだ。高層マンション、ホテル、ショッピングセンター、レストラン、遊園地、病院などが次々と造られている。

特に遊園地がすごい。ジェットコースターやゲームなどの施設に北朝鮮の人々は狂喜している。遊園地では、コンパクト・デジタル・カメラで写真を撮り合っている。平壌のディズニーランド化を目指しているのかと思ってしまう。豪華なプールやイルカ館などもある。

テニスやバレーボールなどができる小規模の運動公園も市内の各所にできた。市民の間ではスポーツブームなのだ。ある政府関係者は、趣味はテニスだと話していた。

女性もおしゃれだ。夏には日傘をさす女性が目立つ。若い母親はバギーカーに赤ちゃんを乗せている。赤ちゃんの抱き方も、伝統的な背中のおんぶではなく、日本で最近よく見かける前抱きだ。

平壌だけではない。元山や新義州などでも、プールなどが最近、できた。特に元山の遊園地は大規模で、豪華だ。元山付近に馬息嶺スキー場を建設した。

平壌などの街角には、キヨスクのような売店があちこちに出現した。主に売っているのは、ジュース、お菓子、アイスクリームなどだ。アイスクリームを食べながら歩く子どももいた。

街では乗用車が急増した。合弁の国産車が多いが、日本をはじめ米国、ドイツなどの車も多い。婦人が運転しているのもよく見かける。マイカー族が出現しているという。地方では自転車が多い。かつては平壌でも自転車をみかけることはまれだった。

金正恩政権になり、どうして北朝鮮はこれほどに変貌を遂げることができたのか。そこが謎だ。昨年2月の核実験により、国際的制裁を受け、最大の支援国である中国との関係が大きく冷え込んでいるにもかかわらずだ。

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2014年11月27日 up date

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