講演依頼、コラム執筆、国際交流企画など、ご相談は無料です
映画監督ガリン・ヌグロホは、「コンパス」紙(2014/5/14付け)において、国際交流基金にアジアセンターを開設した日本の対アジア文化外交強化を紹介しながら、世界各地に「インドネシア文化の家(インドネシア文化センター)」を展開して、インドネシア語学習を奨励し、インドネシア文化を紹介する文化交流を強化すべきと主張した。ガリンの論考の最後を引用しておこう。
まだ建国間もない頃、この国(インドネシア)は、〔今よりも〕海外から尊敬され、アジアを鼓舞する存在だった。建国の父たちの多くは行動的文化人であり、たとえばチョクロアミノト氏〔民族独立運動の指導者〕は演説家・作家・舞踊家であり、一方スカルノ氏〔初代大統領〕やモハマド・ヤミン氏〔教育文化大臣〕は偉大なる詩人でもあった。インドネシアの深遠なる哲学パンチャシラは、彼らの文化に対する愛着なしには生れ出ることはなかっただろう。というのは文化とは、思想であり、行動であり、国民国家の呼びかけに答えるものであるからだ。
それがゆえに我々は、次期大統領候補者には「インドネシア文化の家」を推進していく能力を有する者でなければならない、と考えるのだ。
これは、暗にジョコウィ支持を表明したものだ。知識人・文化人層は、次期大統領によるインドネシア新外交へ熱い視線を寄せている。
「プラボウォ旋風は中間層の保守回帰の前兆かもしれない」と前述したが、逆に、庶民出身ジョコウィが門閥出身プラボウォに勝利したことは、新市民社会が縁故主義の旧体制をついに凌駕したという異なる解釈も可能だ。
米国のオバマ大統領は、卓越したパブリック・ディプロマシーの実践者と言われ、ジョコウィはその容貌から「インドネシアのオバマ」と呼ばれる。今年に入ってから政党間の駆引きに巻き込まれて「市民と対話のできる政治家」という彼の強みを見失っていたきらいがあるが、彼らしさを取り戻して、コミュニケーション能力と文化的感受性に長けた国民性に根ざすインドネシア独自のパブリック・ディプロマシーを構築した時、「オバマのそっくりさん」であることを超え、急速に変貌を遂げるインドネシアの今を体現する「若く躍動するアジア新興国の指導者」像を世界に提示する可能性を秘めている。
初代大統領スカルノは、詩人とさえいえる天才的な言語感覚、文化芸術の素養、弁論術によって国民を魅了し、さらに新興アジア・アフリカの論客として世界の注目を集めた。ジョコウィはスカルノ以来、この国に久しぶりに登場した「パブリック・ディプロマシーに強い大統領」に大化けするかもしれない。
(7/5 ジョコウィ支持アーティストのコンサート集会:なんだか明るい)