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次期インドネシア大統領が直面する国際情勢は流動性を増している。その中で新興国として台頭したインドネシアは、アセアン経済共同体、中国の海洋進出、国際テロネットワーク、環境保全等々の外交課題で内外世論を味方につける国際競争に、一層積極的に取り組まなければならない。
国境を容易に越える情報通信や交通の発達により、国際的影響力をもつ個人や民間組織が結びつき、そのネットワークによって国際世論が形成される傾向が強まっている。また各国政府の政策を左右しうる巨大メディアの寡占化も進行している。世界は広報、文化交流、草の根市民交流を通じて国際世論の支持を獲得し、多様な人的ネットワーク作りをめざす「パブリック・ディプロマシー」を強化している。
発足する新政権が、国際世論を味方につけるか成否のカギを握るのが、次期大統領のパブリック・ディプロマシー戦略観であり、この新しい外交への対応能力なのである。
ジョコウィは外交経験に乏しくとも、その重要性を本能的に理解していると思われる。その根拠となるのが、5月に発表した選挙公約において、インドネシアの外交力を強化するためにはそのインフラ・ストラクチャーを構築する必要があると主張し、直面する課題の一つとして「パブリック・ディプロマシーを通じた国民の外交への参画」を訴えていることだ。
彼はソロ市長時代、地域の文化資源を活用し対外な地域イメージ、ブランドを向上させることによって経済活性化をめざす創造経済的な政策を展開して注目を集めた。またジャカルタ知事に就任すると、抜き打ち役所視察のようなガバナンスの公開性・透明性の向上をめざす大胆な行動に出て、市民やメディアの喝采をあびた。こうしたパブリック・ディプロマシーと親和性のある行政手法の背後には、ジャーナリストを含む「チーム・ソロ」と呼ばれる側近や研究者、文化人などのブレーンが存在する。