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国際問題コラム「世界の鼓動」

イスラムの倫理と資本主義の精神

賛助会員 小川 忠

(筆者は国際交流基金のジャカルタ事務所長として独自に情報発信をしている)

上記の表題は、社会科学の古典的名著をもじったものだ。ドイツの社会学者マックス・ヴェーバーが20世紀初頭に著した『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の『精神』』(以後「プロ倫」と記す)である。日本の大学でも「プロ倫」は社会科学を学ぶ者にとっての必読書とされている。

とはいえ欧米の宗教史に疎い日本の大学生にはかなり難解な書で、私にも30年以上前の学部学生時代に、岩波文庫版を悪戦苦闘しながら読んだ記憶がある。それ以来、「プロ倫」に関する自分の理解は概して以下のようなものだった。

●ヴェーバーは19世紀半ばから20世紀前半の社会科学において強い影響力をもっていたマルクス主義の「下部構造が上部構造を規定する」という唯物史観を批判する立場から「プロ倫」を書いた。

●近代資本主義は、勤勉と蓄財を説き合理性を重んじるプロテスタンティズム、特にカルヴァン主義の倫理から生まれた。つまり「上部構造(宗教)が下部構造(社会体制)を規定する」ことをヴェーバーは提示した。

専門家を除き大方の「プロ倫」読者は、私のような理解ではないだろうか。中にはさらにこの理解を拡大させて(私は与しないが)、非合理、運命論のイスラム教義は経済発展の障害になっているという考えの人もいるようだ。

最近のインドネシアの新聞において交わされた議論に触発されて、もう一度「プロ倫」を読み直してみた。その結果、不覚にも自分が同書を長く誤読してきたことに気付いた。

今回は、世界最大のイスラム人口を擁するとともに、急速な経済発展によって世界から注目されるインドネシアの宗教と経済の関係性をめぐる一考察である。

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2014年2月23日 up date

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