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最も気になる類似点をひとことで言うと “complacency” という言葉があてはまる、とThe Economistは指摘します。「慢心」とか「油断」という日本語がこれにあたる。例えば企業。あの頃も現代も、それぞれの利益追求に心を奪われていて、経済の水面下で不気味な毒ヘビが鎌首を持ち上げつつあることに気が付いていない。さらにナショナリズムをもて遊ぶかのように振る舞う政治家も100年前と同じ。経済改革が進まない状況を反日気運を盛り上げることで覆い隠そうとしている中国の指導部、安倍晋三氏はこれと同じような理由で日本のナショナリズムを煽り立てている。
危機的なのは日中関係だけではない。2014年春にはインドで総選挙があるのですが、最も優勢が伝えられるのが、野党のインド人民党だそうで、この党が連邦首相の候補者として担ぎ上げるのがナレンドラ・モディ(Narendra Modi)という人。彼はグジャラートという州の首相なのですが、ヒンズー系のナショナリストで、かつて自分の州でイスラム教徒が大量虐殺されたという非難を受け容れようとしていない人物としても知られているのだそうです。このような人物がインドの首相になり、隣国のイスラム教国・パキスタンとの間で核戦争の火種を抱えることになる可能性は大きい、とThe Economistは警戒します。
では第一次世界大戦の二の舞をさけるためには何をする必要があるのか?The Economistの社説は二つのことを挙げています。一つにはアメリカと中国の協力です。例えば核保有国である北朝鮮の内部崩壊の際に彼らの核兵器が暴発することのないようにするための協力があります。さらに海洋における危険な脅しのゲーム(dangerous game of “chicken”)を続ける中国の行動からすると、いずれはどこかで衝突が起こることが眼に見えているのにそのような事態に対処するような制度が出来ていない。アジアの海域における海事規範(code of maritime conduct)のようなものを作る必要がある。
ではもう一つの危機回避策はなにか?The Economistによると、それはアメリカによるもっと積極的な外交政策なのだそうです。バラク・オバマがあまりにも何もやらなさすぎるというのです。特に中国、インドらの新興国をグローバル体制に組み入れる政策が少なすぎるというわけです。
アメリカの軍事力と経済力、さらには文化的な影響力も含めた「ソフトパワー」を考えると、気候変動やテロリズムのような国境を超える危機に対処するためにはアメリカの存在は欠かすことができない。アメリカが世界の秩序維持のためのリーダーとして振る舞うことがない限り、それぞれの地域で力を持つ国が、近隣諸国を脅すことで自分たちの力を試そうとすることになるのである。
Thanks to its military, economic and soft power, America is still indispensable, particularly in dealing with threats like climate change and terror, which cross borders. But unless America behaves as a leader and the guarantor of the world order, it will be inviting regional powers to test their strength by bullying neighbouring countries.
いまの世界にある危機がそのまま第一次世界大戦のような狂気に進む可能性は低い。人間は自己利益によってのみ動くものだというのであれば、誰も得にもならない戦争などする人間はいない。「狂気」も経済的合理性には勝てないと考えるのが普通であるけれど、1914年には狂気が勝ってしまったのである・・・というわけで、The Economistの社説は
それでも狂気が勝利するときには地獄が待っている。常に理性が勝つと考えるのは「慢心」というものであり、許されるものではない。それこそが100年前の教訓というものであろう。
But when it triumphs, it leads to carnage, so to assume that reason will prevail is to be culpably complacent. That is the lesson of a century ago.
と言っています。