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加えて、ベネズエラ経済は近年、少なからず問題を抱えている。毎年20%から30%にもなるインフレ率(本年2013年は40%を超えると言われている)、貧富の格差の固定化、実勢と乖離した為替の固定相場制から来る種々の矛盾などがすぐに指摘できる。加えて、中南米でも1,2を争うとされる殺人率の高さなど治安の悪化も指摘されている。ベネズエラの重要産業国有化という急進的ともいえる社会主義路線もあって、外国からの投資も停滞気味である。
こうした諸事情を背景に、べネズエラと日本との経済関係は以前よりも低調に推移している。2011年の統計でも、日本への輸出はアルミ地金、鉄鉱石、カカオなどで31.7憶円、日本からの輸入も自動車を含む機械機器を中心に683億円である。世界最大の埋蔵量を誇る石油大国であるにもかかわらず、石油の対日輸出は、80年代には年間2,3億ドル程度の輸出が記録されている年もあるが、その後は全くなく、私が赴任した2007年に年間200万バレルの輸出があり、ここ1,2年は2-300万バレル単位で日本に達しているだけである。ベネズエラの油種が、重質油がほとんどであり、日本の業界が必要としていないこと、また大西洋側にしか積み出し港がないので、輸送の問題があることなどが理由であるが、今や世界最大の石油埋蔵量を誇るベネズエラとのエネルギー面での協力関係は、もっと重視すべきではないかと思っている。
ベネズエラ側も、石油の輸出先多角化が悲願であり、近年は中国への輸出を増加させており、ベネズエラ側統計では日量60万バレルに達しているとされる。日本も乗り遅れてはいけないのではと考えてしまう。たまたま、前任地のパナマには、1980年代に建設されたパイプラインがあり、これを利用すればベネズエラからの輸送距離も半分以下に短縮される。とすれば、日本、中国、韓国など東アジアの石油輸入大国が協力することにより、ベネズエラから北東アジアのオイルチャネルができるのではと考えてしまう。
このパイプラインは、もともとアラスカ原油をアメリカ東海岸に輸送するために、パナマとコスタリカ国境地帯に建設されたものであり、1981年から93年まで使用されていた。アラスカ原油の開発が終わるとともに、ほとんど使用されなくなっているが、その後もメインテナンスもされている。しかも、もともとは太平洋側からカリブ側に輸送されていたものであるが、2009年には逆送プロジェクトが完成し、現在はベネズエラ原油の輸送にも使用が可能になっている。