NPO法人 アジア情報フォーラム

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国際問題コラム「世界の鼓動」

サッチャリズムの功罪

ではサッチャーさんは、自由競争が冷酷な「弱肉強食」「格差社会」に繋がるかもしれないということを全く考えなかったのか?ウィレッツによると、彼女もそれは考えており、「自由競争=弱肉強食」にならないための思想的な根拠として「クリスチャンとしての義務」を持ち出していた。サッチャーさんが1988年、スコットランド教会の総会(General Assembly of the Church of Scotland)で行った演説の中に次のようなくだりがあります。

クリスチャンであるならば、自分たちの仲間である男や女を助けることはクリスチャンとしての個人的な義務であると考えるはずです。クリスチャンなら子供たちの命をかけがえのない共有財産だと思うはずです。こうした義務は議会によって作られる世俗的な法令によって要求されているのではありません。それらはクリスチャンであるということに根拠を置いたものなのです。
Most Christians would regard it as their personal Christian duty to help their fellow men and women. They would regard the lives of children as a precious trust. These duties come not from any secular legislation passed by Parliament, but from being a Christian.

サッチャーさんはまた別のところで

自分の面倒は自分でみると同時に隣人の世話をすることも我々の義務なのですよ。人生お互いさまなんです。
It is our duty to look after ourselves and then also to help look after our neighbour and life is a reciprocal business.

とも述べている。「世の中で成功した人はコミュニティに対して幅広い責任がある」というのがサッチャーさんの理解であったわけですが、ウィレッツによると、彼女は減税にあずかった富裕層が慈善事業への寄付を十分に行っていない(there was not much more charitable giving by the rich whose taxes she had cut)と嘆いていたのだそうです。キリスト教的な信仰心は英国保守党の政治姿勢の中では重要な部分を占めているのですが、

個人個人の宗教的な信仰心に訴えるサッチャーさんのやり方は「非宗教の時代」には十分な説得力を持たなかったのだ。
Thatcher’s appeal to personal religious faith did not persuade in a secular age.

とウィレッツは言っています。

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2013年5月14日 up date

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