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国際問題コラム「世界の鼓動」

“商人国家”にとっての原子力

北村 行孝(会員)

3・11以来、日本の原子力政策をめぐって、脱原発、運転再開への条件など様々な議論がなされている。だが、単なるエネルギー利用としての原子力は氷山の一角であって、海面下には国際政治や安全保障など、より大きな部分が潜んでいることも忘れてはならない。

そうしたことを思わせる出来事が、このところ相次いでいる。北朝鮮の核開発は今に始まったことではないが、中国が4月に2年ぶりに発表した国防白書で、従来から踏襲されてきた核兵器の「先制不使用」の記述を削除した。韓国が米国との原子力協定改定交渉で、ウラン濃縮と使用済み核燃料の再処理を認めさせようとして拒否された、と報じられたのも同じころの出来事である。平和利用と軍事利用が不即不離であることをしのばせる。

侮られない商人を目指し

国連安全保障理事会の常任理事国(米英仏露中)はご存じの通り、すべて核保有国である。究極の軍事力の象徴である核を持った国が、世界秩序の維持、再構成などに主導権を発揮し、他の非核国の出る幕が少ないのは紛れもない現実である。ちょっと下品なたとえをすれば、腕っ節自慢のやくざの親分衆が取り仕切っているとでもいえようか・・・。

日本は先の大戦に負けて軍事国家であることをやめ(もしくはやめることを強いられて)、商人国家としての道を歩んできた。米国の核の傘のもと、軽武装ですませ、経済的発展にほぼ専念してきた。米国という大親分の庇護のもと、結構な大店の主人になれたわけだ。

その日本にとって、原子力とは何だったのか。経済発展には安定したエネルギー供給が欠かせず、科学技術力はありながらエネルギー資源に恵まれない国にとって、原子力発電を選択することは自然なことであった。だが、並みの原子力発電国で収まらなかったことが、日本の特異なところである。

国産原子炉の開発、ウラン濃縮、使用済み燃料の再処理・・・と、フルセットの技術獲得をめざし、ほぼ達成した。これらは、核開発と裏腹の技術で、望んだからといって手に入るものではない。原子炉技術供与国、ウラン濃縮・ウラン燃料提供国などが協定にもとづき、あるいは外交圧力をかけ・・・と、あの手この手の妨害を行う。韓国が再処理技術などの獲得を目指しながら、米国が認めていないのが好例である。

日本とて、楽な道のりだったわけではない。旧動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)が開発してきた再処理技術については、1970年代末に米カーター政権の強硬な反対にあいながら、プルトニウムを単体で取り扱うことのないように工程変更するなど、粘り強い交渉でようやく認めさせた。米国の忠実な同盟国であるとともに、国際原子力機関(IAEA)が主導する世界的な核拡散防止体制の優等生であったことも陰に陽に影響した。

こうして勝ち得たのが、世界でもまれな、核保有国と同等の技術力をもつ“準核兵器国”の地位だった。経済最優先で考えれば、割高なウラン濃縮や使用済み燃料の再処理などを自前で目指す必要はなく、核保有国の提供するこれらサービスにお金を出すだけですむ。日本の電力業界も独自技術を強く望んだわけではない。だが、政策立案者のなかには、ある思いがあったに違いない。

「相手(日本)は堅気の商人にすぎないと侮ると、いつかは怒りが募って本当は怖いかもしれない」。敵対的な国にそう思わせたいというのが、日本の原子力開発のもう一つの隠された側面であったといえよう。上品な言葉で表現すれば、仮想的(バーチャル)な核抑止力である。近年、散発的に発掘・公開される様々な政策資料などが、間接的ながらこうした思いを伝えている。

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2013年5月7日 up date

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