NPO法人 アジア情報フォーラム

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【国際交流活動】台湾高座会との交流

栄誉の里帰り

撮影:石川理事

撮影:石川理事

作家阿川弘之氏は、かつて台湾・高座会の人々の存在を知り、深い感慨に襲われたという。とりわけ彼らのひとりが詠んだ短歌「北に対き、年の始めに祈りたり、心の祖国に栄えあれかし」に、感涙を禁じ得なかった、と、ある雑誌で述懐している。この台湾・高座会は先の大戦末期、「高座海軍工廠」(現・神奈川県座間市周辺)に、台湾から派遣された元少年工たちが集まって1980年代後半に結成された組織である。メンバーは一様に、戦時中の苦しい体験にも関わらず、若く多感な青春の時期を日本で過ごしたことを、常に人生の懐かしい「追憶」の世界に抱きしめて生きてきた人たちである。敗戦で台湾に帰ったあとも、彼らの心情の中では「日本を第二の故郷」として生き続け、高座会結成後、10年毎に、大勢の仲間とともに、日本を訪問し、元海軍工廠のあった町で、日本側の支援組織(石川公弘代表)と交流、交歓行事を行ってきた。

過去の歴史問題がなお尾を引き政治的な摩擦も絶えない東アジア情勢にあって、日本と台湾は、極めて親密な友好関係を維持しているが、彼らはその台湾の親日派の中でも、先頭に立って、活躍してくれている、まことにありがたい存在である。阿川氏の述懐には「無謀な戦争をやって、敗戦し、彼らを見捨てた日本を“心の祖国”と思ってくれる大勢の老人たちがいる国が世界中、どこにあるか」とお礼の言葉もある。

こんな高座会のメンバーの総勢250人が、少年工として初来日して以来、70年目という節目の年のこの5月初旬、再び「第二の故郷」にやってきた。いまや平均年齢は80歳以上の高齢者たちばかりだが、壮健そのもの。往時には約8000人が少年工として日本に派遣されたが、戦時下で死亡した仲間もいたため、今回の訪日でも、恒例の座間市での交流行事のあと靖国神社に参拝するなど、精力的に数日の“故郷生活”を満喫した。

その多忙な日程を割いて、私たちのNPO「アジア情報フォーラム」(理事長・池田維)会員とも、国際交流企画の一環として、懇談の機会を設けていただいた。彼らの今回の訪日は日本の一部主要メディアでも取り上げられたが、私たちの組織との懇談の経緯は、理事長が日本と台湾の関係増進を図る「交流協会」の代表(駐台湾日本大使に相当)も歴任した元外務省高官であったことによるものである。理事長は数年前までの台湾在勤中に、高座会と親しく交流しており、今年春の叙勲で、高座会代表の李雪峰氏(86)が旭日小授章の栄誉に輝いたことにも陰で応援した。

懇談で李氏は、池田理事長との久しぶりの再会を大いに喜ばれ、我々会員にも、数々の心温まる懐旧のエピソードを披露してくださった。

「少し時間がかかったが、今回の授賞は本当によかった」「これで栄誉の里帰りができたことになる」―――双方がこんな思いをもって、懇談を終えたが、やはり、われわれの近くに、日本への変わらぬ思慕をもつ、こんな心根の優しい人たちが健在し、彼らが後進の世代にもその心を伝承してくれることを考えると、日本政府の今回の叙勲は大いに評価すべき決定というべきであろう。

事務局(文責・清本修身)

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2013年5月14日 up date

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