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賛助会員 春海 二郎
(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)
英国の世論調査機関、IPSOS-MORIが「年を取る」(ageing)ということについての国際世論調査を行っています。
30か国の人びとを対象に意見を聞いたもので、「高齢者になることを楽しみにしている」(looking forward to old age)と答えた人は10人に3人程度であったそうです。もちろん国によって違いはある。例えばインドでは7割以上、トルコではほぼ7割が年寄りになることを肯定的に考えている。ただその種の考え方をする国は30か国中6か国だけだったそうです。年を取ることに肯定的な見方をする意見が最も少ない国の代表格がハンガリー(7%)と日本(10%)で、この二つが最下位を争っている。英国人で年を取ることに肯定的な人間は約3割だからおよそ世界の平均と同じといえる。
そもそも「年寄り」って何才くらいの人のことを言うのか?How old is old?という質問については、国によって結構違いがあるのですね。世界平均では66になると「年寄り」ということになるらしいのですが、スペインなんか74才ですよ。そうかと思うとサウジアラビアのように「年寄りの始まり=55才」のような国もある。日本も英国も66~68が年寄りの始まり年齢だそうです。
ちょっと面白いと思うのが「友人の中に15才年上(年下)の人間はいるか?」という質問に何パーセントの人間が「いる」と答えたのかというものです。「15才年上の友人はいるか?」という問いかけは比較的若い人に向けられたものであり、「年下の・・・?」は年寄に対して若い友人がいるのかどうかを問いかけるものですね。パーセンテージが高い国は異なる年代間の交流が盛んであるとも言えますよね。そのようにして見ると、30か国中の最下位を争っている、日本と韓国は他国に比べると年代間の交流が極めて少ない社会であるということになる。
BREXITのおかげで政治がメチャクチャという感じがする英国では、年寄の投票行動がそもそもの混乱の原因などとメディアでは言われている。けれど老人の政治参加に否定的な意見は、日本などよりは少ないのですね。日本では4割以上がこれに否定的なのですが、これは世界的にも3番目に大きな数字です。中国は日本のすぐ後の4番目。ロシアの18%という数字は30か国中の29番目、老人の政治的な影響を最も気にしていないのはオーストラリア(17%)だそうです。
老人に対する敬意について言うと、世界平均では5人に3人が「十分に敬意を払っていない」(people don’t respect old people as much as they should)と答えているのですが、どのような年齢層がそのように答えているのかはっきりしていない。一般的な傾向として言えるのは、南米の国々でそのように感じている人がいちばん多く、最も少ないのはサウジアラビア(26%)なのですが、日本・韓国・中国も非常に少ないグループに入る。いうまでもなく「もっと敬え」という人の割合が高いということと、年寄が敬われているかどうかは別問題ですよね。どちらかというとアジアの国の方が家族意識が強いので、「年寄りは敬え」という意識が高いということかもしれない。
技術の進歩が高齢者の生活を楽にするか?Will technology make ageing easier?という質問に対する答えを見ると、日本人と中国人の感覚の違いが分かる。「楽にする」という答えの世界平均は5割を少し超えた程度なのですが、中国人の場合は8割が肯定で否定は3%しかいない。もちろん30か国中のダントツです。日本人は最下位で「楽にする」という人は4割しかいない。