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会員 尾林賢治
金正恩朝鮮労働党委員長は8月14日から15日にかけ、米領グアムを標的にするミサイル発射計画を見合わせることを示唆した。開戦前夜かと思わせるほど、一気に高まっていた米朝間の緊張はほぼ1週間でひとまず和らいだ。その背後に、中国が環球時報を通じて10日「北朝鮮が先制攻撃した場合、中国は中立を保つ」即ち「米国の攻撃を受けても中朝軍事同盟は守らない」と厳しい警告を発したことが見逃せない。14日にはマティス米国防長官とティラーソン国務長官が連名で米WSJ(ウオールストリート・ジャーナル)紙に寄稿「米国の目的は朝鮮半島の非核化で北朝鮮の体制転換や朝鮮半島統一の加速には関心がない」と金正恩体制を保証すると明言、トランプ大統領の「炎と怒り」警告との硬軟織り交ぜた対応も奏功した。しかし、これで米朝の対話の糸口が開かれたわけではない。21日から北朝鮮が最も嫌がる米韓合同軍事演習が予定通り始まった。北朝鮮の建国記念日(9月9日)などの節目も控え米朝の危険な脅し合いはまだ続く。
北朝鮮は9日「中長距離弾道ミサイル『火星12』4発を同時に発射しグアム周辺を炎で包み込むための作戦を慎重に検討している」と国営の朝鮮中央通信を通じて発表した。ワシントン・ポスト紙が「北朝鮮が核弾頭の小型化に成功しており、米本土に届く核ミサイルの開発も予想より早く完成しそうだ」という米国防情報局(DIA)の分析を伝えたことについてトランプ米大統領が記者団に「北朝鮮はこれ以上、米国を脅さない方がいい。世界が見たことない炎と激怒に直面することになる」と異例の激しい口調で記者団に語った数時間後のことだった。
北朝鮮は7月に2回、ICBMの発射実験を実施したため、国連安全保障理事会は8月5日、中ロを含む全会一致で北朝鮮の主要外貨獲得源である石炭、鉄鉱石、海産物などの輸出を全面的に禁止する追加制裁措置を可決した。北朝鮮の輸出の3割、約10億㌦(約1100億円)の削減を目指し、核・ミサイルの開発資金を締め上げる内容だ。これに対し、北朝鮮は「主権の侵害」と反発、制裁案をまとめた米国に「代償を支払わせる」と表明していた。