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国際問題コラム「世界の鼓動」

北朝鮮核危機をめぐるグレート・チキンゲーム (上)

中国 北朝鮮の核施設を攻撃、体制転換も自らの手でー人民日報系紙報道

中国が北朝鮮に対する制裁に本気になっている理由の1つは、中国自身が北朝鮮の核開発に脅威を感じ始めており、放射能汚染など、度重なる核実験の被害を見逃せなくなっていることが挙げられる。
中国共産党の機関紙、環球時報が4月7日に掲載した「論評=北朝鮮の核問題に対する中国の要点」という中国軍に取材したとする以下のような記事が興味深い。
▽われわれは北朝鮮が第6回目の核実験を始めようとしていることを知っているが、中国はとりわけ、これを憂慮している。北朝鮮が核実験場に選んでいる地点は実に狡猾だ。平壌から最も遠い中国国境沿いだ。中国北東部の住民は北朝鮮の核実験のたびに苦痛を強いられている。北朝鮮は北東部に放射能汚染を撒き散らすべきではない。中国は軍事行使を含め、あらゆる手段を動員して核実験を阻止する。米軍が関わるまでもなく、人民解放軍は北朝鮮の核施設を攻撃する。
北朝鮮との国境地帯は核爆発による放射能汚染だけではなく、大震動による建物の損傷もひどく、
実験の日は校舎が倒壊を警戒して全員が校庭に避難するという。
北朝鮮は中国の友好国だ。同時に中国にとっては韓国、在韓米軍との緩衝地帯であり、安全保障上、重要な地域だ。中国が朝鮮戦争(1950~53年)に人民志願軍を送ったことで北朝鮮とは「血の同盟」だと言われることがある。しかし、金正恩朝鮮労働党委員長は2012年4月の正式就任以来、一度も北京に赴いていない。友好国であっても、決して心を許し合う間柄ではない。核保有国になった北朝鮮を中国は扱い兼ね、持て余し始めている。
環球時報の「論評」を再度、紹介する。
▽中国は北朝鮮の核問題をできるだけ早急に解決することを望んでいる。その際、中国北東部の安全と安定を確保することが大前提になる。大量の避難民が押し寄せる混乱を招くべきではない。中国は国境の鴨緑江の対岸に敵対国が出現することは許さない。米国は鴨緑江を越えて軍を展開すべきではない。人民解放軍は平壌に進行し、新体制づくりに協力する。38度線以北が米国および韓国に一体化するのは許さない。
▽核施設を攻撃すれば、北朝鮮の核兵器は永久に排除される。核燃料資源は限られており、再度、調達できる可能性はない。核兵器は北朝鮮が中国や米国に反抗する切り札だが、そのカードを失ったとたんに、茫然自失となり、大人しくなる。核施設が破壊されても、北朝鮮は反撃もしない。恐らく国民にはそのニュースを知らせないで済ませるだろう。
この報道は人民解放軍の公式見解ではないにせよ①6回目の核実験を強行すれば、中国は北朝鮮の核施設を攻撃、核兵器を中国に持ち去る②北朝鮮が崩壊し大混乱に陥り大量の難民が中国に押し寄せてくるのは望まない③体制転換は中国の責任で対応、韓国、米国の介入は許さない④南北統一は好ましくないーなど、中国の本音が垣間見える。
トランプ政権は発足後「北朝鮮は中国の好きなようにしてよい」と、中国に伝えたという噂があると、4月16日付日経コラム「風見鶏」で大石格編集委員が伝えている。「半島統一は韓国にとっては悲願かもしれないが、米国にとっては所詮ひとごとだ。・・・中国に汚れ役をさせることができればこんなに楽な話はない」と指摘する。
そこに、トランプ大統領の「適切な状況下」であれば金正恩委員長と会談する用意があるという発言が飛び出した(5月1日のブルンバーグニュース)。選挙期間中、大統領は金委員長と「ハンバガーでも食べながら話したい」と発言していた。以下に述べるように、トランプ大統領は4月7~8日のフロリダの会談以来、北朝鮮との交渉を習近平主席に任せてきたはずだ。トランプ氏独自の思惑、駆け引きなのか、それとも待ちきれなくなってきたのだろうか。

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2017年5月2日 up date

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