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賛助会員 小川 忠
(筆者は国際交流基金のジャカルタ事務所長として独自に情報発信をしている)
もはや日本語の「祭り」という言葉は、インドネシア語として定着したのではないだろうか。毎月この国のどこかショッピングモールや学校で「Matsuri(祭り)」「Bunkasai(文化祭)」が開催されている。ジャカルタ首都圏では「桜祭り」「縁日祭」「ジャカルタ日本祭り」が「三大祭り」ともいうべき規模を誇り、それ以外にも様々な「祭り」が存在する。
「三大祭り」のなかでも最も入場者が多いとされる縁日祭が、さる5月9日、10日ジャカルタの繁華街ブロックMで開催され、今年も25万人以上がやってきた。お招きを受けて両日とも足を運んだが、夜になっても人波が途切れない。新年の浅草寺仲見世のようだ(写真)。世界各地の日本祭を見てきた濱田雄二前メダン総領事もこれほど来訪者が多い祭りは見たことがなく「世界最大規模であることは間違いない」と評している。(「じゃかるた新聞」5/11)
この巨大な縁日祭のあちこちで、二日間にわたって「戦い」がくり広げられていた。「日本・インドネシア市民連合」対「無数のポイ捨てごみ」の戦いだ。
「ジャカルタお掃除クラブ」という市民グループがある。彼らの志はただ一つ。「役所の力を借りず市民の手でジャカルタをきれいにする!」ということ。炎天下のなか200人の日本とインドネシアのボランティアが、25万人の出す膨大なゴミと格闘した。同クラブ代表のデワント・バックリー代表は「難航不落の城を落とすつもり」で縁日祭にのぞんだという。その結果やいかに?
残念ながら「完敗だった」という。『じゃかるた新聞』掲載のエッセイ「火焔樹」(2015/5/15付け)で吐露されたデワント代表の嘆きに心が痛んだ。
こんな活動に意味があるのかと自問を繰り返した2日間だった。ごみ拾いする人がいるから捨てても構わない、という来場者の姿勢がはっきり見て取れる。拾っても拾っても誰も見向きをしない。ボランティアたちは疲れ果てるばかり。怒りとやるせなさが込み上げてくる。