NPO法人 アジア情報フォーラム

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国際問題コラム「世界の鼓動」

敗れざる者たち:市民ボランティアの挑戦

ゴミ処理に苦闘するジャカルタ 

 

 ジャカルタのゴミ処理問題は、深刻かつ複雑である。一言でいえば、ゴミ処理システムが都市の膨張に追いついておらず、機能していない。

日本の環境省やジェトロが行った調査資料によれば、2011年の時点でインドネシア全国380都市から一日平均8万トンのゴミが出ている。ジャカルタだけでもゴミの量は、1日平均6500トンにのぼる。

ゴミの多くは食品などの有機物で、インドネシア環境省2004年統計では、ジャカルタのゴミの66%が食品、10%が紙で、有機廃棄物はゴミ全体の82%を占める。他方、プラスチック・ゴムは12%で非有機廃棄物の割合は18%となっている。

ところでジャカルタは日本の地方自治体のように、自治体が定期的に家庭ゴミを収集する体制になっておらず、廃棄物収集業者に任されている。業者は各家庭からでたゴミを荷台に乗せて回収し、一時処分場へ持っていく。この過程で業者は、新聞・雑誌、ビン、ペットボトルなどを分別し買い取り、リサイクルに出しているのである。自治体は一時処分場に集められたゴミを、都市周辺部や郊外にある最終処分場にもっていき、圧縮固形化して埋め立てに使っている。

焼却施設の不足から焼却されるゴミがごくわずかなのは、かなりの問題だ。処分場から出る汚水は、地下水、河川の水質を悪化させ、住民の健康をおびやかす事態となっている。処理場に運ばれないゴミも膨大で、ジャカルタではゴミ全体の7%が回収されず、放置されていると考えられる。

以上のような事実を並べただけでもため息をつくしかないが、さらに状況を深刻化させているのは、人びとの意識の問題である。ポイ捨ての横行だ。ゴミを捨てることへの罪悪感を持つ人が少なく、「ゴミを捨てても清掃人が拾ってくれる。ゴミを拾うのは、彼らの仕事を奪ってしまうではないか」と考える人までいるらしい。

その結果、ジャカルタを流れる河川には、家庭ゴミのみならず、バイクや自転車、家具などの粗大ゴミも投棄されている。近年雨季になるとジャカルタは洪水に見舞われるが、被害が拡大している原因の一つは、川に捨てられた粗大ゴミが排水溝をつまらせ、排水機能が働かなくなっているためである。ジャカルタ行政当局は、ポイ捨て禁止・罰金条例を制定したが、効果を挙げているとは言い難い。

このようなジャカルタのポイ捨て無法状態を、在住外国人のなかには、インドネシア人の国民性や風土・文化要因と結びつけて議論しようとする人もいる。しかし、これは間違った見方だと思う。というのはこの議論は、国民性や文化を「変わらないもの」という前提にたっているが、国民の意識は時代とともに変わるからだ。我が身をふり返るとゴミを分別収集するという意識が日本社会に芽生え、定着したのも、この半世紀のあいだでのことである。ポイ捨ては意識の持ちかたの問題ではあっても、国民性の問題ではない。

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2015年5月24日 up date

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