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国際問題コラム「世界の鼓動」

英国のパーセンテージ

賛助会員 春海 二郎

(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)

今週の木曜日(5月7日)は英国下院の選挙の日です。保守党も労働党も単独過半数はとれず、二大政党制から多党政治の時代へと移り変わる時代を象徴するような選挙になると言われています。英国社会そのものの変化が政治の世界に反映されているということですね。

そこで世論調査をいくつか紹介しながら現在の英国人が何に喜び、何に不安や怒りを覚えながら暮らしているのかを紹介したいと思います。参考にするのは、4月19日付のThe Observerのサイトに掲載されている “Britain Uncovered“(素顔の英国)という企画記事です。言うまでもなく紹介するのは、相当に長い記事のほんの一部です。できれば本文をお読みになることをお勧めします。

金持ちほどお金に不安?

まずは毎日の生活で何についていちばん不安(anxiety)を覚えるか?という問いなのですが、トップにくるのは「お金」、次いで「家庭・家族」、「健康」、「仕事」などとくる。この中の「仕事」とは「仕事上のプレッシャー」という意味であり、「時間」というのも「時間に追われるプレッシャー」という意味です。お金のことがいちばん心配ということについては年齢別の違いはないそうなのですが、ちょっと面白いと思うのは地域によって差があるということ。The Observerによるとイングランドの東部や南西部ではお金に関係する心配が大きい。ウェールズではmoneyよりもfamilyのほうが大事だと考えられているのだそうです。イングランドの南のほうにはどちらかというと富裕層が住んでおり、そのような人のほうがウェールズや北アイルランドの人よりもお金にまつわる心配が大きいということになる。

「仕事」(work)にまつわる心配は第4位なのですね。それも一桁しかいない。最近の流行言葉であるwork/life balanceに関係するのですが、現在仕事に就いている人に「給料はいまのまま・勤務時間が短くなる」(Shorter hours/same money)というのと「勤務時間はいまのまま・給料が高くなる」(Same hours/more money)の二つの選択肢があるとしたらどちらをとるか?と聞いたところ、6:4で後者のほうがいいと答えた人のほうが多かった。つまり勤務時間が短くなる(個人の時間が増える)よりもお金がたくさん貰える(個人の収入が増える)ほうが望ましいと考えている人のほうが多いということですね。

 

極端すぎる、南北格差

日本の都道府県の中ででいちばん金持ちなのはどこか?と問われれば、日本人ならさしたる根拠もなく「東京」と答えるのではありませんか?同じことを英国人に聞いたら何と答えるか?当然、ロンドンがいちばんの金持ち(wealthiest)と答える(下のグラフ)。2番目は?と聞かれると、日本人は何と答えるのか?大阪?京都?神奈川?・・・「分からない」というのが正直なところなのでは?でも英国の場合は、ほとんどの人がイングランド南東部(South-east :ロンドンから南へ下ったところ)と答えるに決まっている。ここは「金持ちロンドン」の金融街などでしこたま儲けている皆さんや定年になった高級官僚らのベッドタウンです。

英国人が考える富裕エリア

ロンドン:65%

イングランド南東部:22%

イングランド南西部:5%

イングランド北東部:1%

スコットランド:1%

ウェールズ:0%

北アイルランド:0%

上のグラフは、英国人の間で「金持ち」であると思われているエリアに関するものです。実際に金持ちであるのかどうかは分からない。あくまでもイメージです。が、そうだとしてもこのグラフが示す格差はちょっと異常だと思いません?むささびが本当に異常だと思うのは、2位のイングランド南東部とそれ以下のエリアの間に存在する差です。イングランド南東部をロンドンのベッドタウンだと考えると、英国人の間におけるこの2エリアのリッチなイメージは圧倒的です。さらに言うと、イングランド以外の3地域がいちばん下に来ており、いちばん得点が高いのはスコットランドの1%だけ。ウェールズと北アイルランドは「0%」です。単なるイメージとはいえ、この格差は深刻です。こうなるとスコットランドでナショナリズムが高まるのも当然だと思いません?ウェールズとや北アイルランドの住人たちが「自分たちは英国ではない」という意識を持つのは極めて自然なことですよね。

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2015年5月4日 up date

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