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国際問題コラム「世界の鼓動」

LCC時代の内幕

LCCのもう一つの特徴は各都市の郊外にある「第二空港」を利用していることです。

むろん、最大のテーマはコスト削減で、これには①早く乗客を搭乗させる②早く出発する③早く目的地に到着する・・の3つの「早く」を実践することに重点が置かれています。このほかにはご存じの通り、機内サービスの食事などや手荷物を有料制にしたり、航空機も比較的小型の同一機種に統一しています。前者は「ノン・フリル制」といわれる方式で、いわば“余計な飾り”をなくすことであり、後者は運航コスト、整備コストを考えたもので、どちらも経費削減を図る目的があります。

先日、私は出身会社のANA(全日空)が設立したLCC「ピーチアビエーション」(関西空港が拠点)本社を訪問してきましたが、社長と秘書以外の従業員はすべて空いている机に自由に座るという事務所運営をしており、その机もすべてどこかからタダで調達してきたものばかりでした、懸命の経費削減をしているというわけです。これではあまりにも侘しいので、客室乗務員の制服は、外国人デザインの華やかなピンク色でした。

日本ではLCCはやや遅くスタートし、2010年にピーチアビエーションやバニラエアー、ジェットスターが発足しました。そのずっと前の1988年には、厳密にはLCCではないが、低運賃のスカイマークが登場しています。「スカイマーク」はご存じのように、国際線への飛躍を目指して欧州から新鋭の大型旅客機6機購入の発注をしました。しかし、契約代金の支払いが難しくなり、いま大変苦境にありますが、私は個人的には最終的に何らかの方法で問題を解決し、復活すると考えています。

ちなみに日本の航空輸送と関連して無視できないのは、空港問題があります。1980年代末から90年代初頭にかけてアメリカのブッシュ(父親)政権時代に行われた、日米の貿易不均衡を是正するための両国の構造協議で、アメリカは日本に航空のインフラ整備を強く求めてきました。これに応じて日本では滑走路の総延長拡大に乗り出し、空港の増設が急速に進められました。この結果、いまや日本全国で99空港もあります。これらすべての空港が採算ベースで経営できるはずがありませんが、地方空港増設の波に乗って、中国や韓国、東南アジアのLCCが日本への乗り入れの新路線開設に利用しています。

LCCを含め航空産業界には「2030年問題」とされる重大な課題が浮上しています。それは深刻なパイロット不足です。現在40歳代後半のパイロットがその時期に大量退職する予定になっています。この事態に対応するために、パイロットの養成期間を従来より8か月間短縮する方針が国際関連機関によって打ち出され、その方向で実施されています。また、一部私立大学で、パイロット養成の学部が開設されており、官民合同で対応しています。

航空業界はこのように大きな問題を抱えていますが、旅客者数は今後さらに増加するでしょう。政府は日本の多様な伝統、現代文化を売り込むため、「クールジャパン」(格好いい日本)政策を打ち出し、その一環として海外からの観光客の誘致を積極的に進めています。こうした動きは、厳しい国際競争に見舞われているLCCを始め日本の航空業界に大きな追い風になると、私は期待しています。地方の空港もLCCと組んで、外国人観光客を呼び寄せ地域活性化にもっと知恵を絞ることが重要で、それが日本経済の再生につながると考えています。

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2014年9月28日 up date

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