NPO法人 アジア情報フォーラム

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国際問題コラム「世界の鼓動」

アメリカから見る「STAP騒ぎ」

 

賛助会員 春海 二郎

(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)

8月13日付の毎日新聞のサイトに「STAP論文:共著者の米教授病院休職」という見出しの記事が出ていました。STAP細胞に関連する論文で小保方さんらの共著者として名前が出ていた、アメリカのチャールズ・バカンティという教授が、9月1日をもって所属先の病院の麻酔科長を辞任、1年間休むことになったと当の病院が発表したというものです。記事(共同)には「(病院は)STAP細胞論文の不正問題と退任との関係については触れていない」と書かれています。

カリフォルニア大学デービス校にポール・ノフラー(Paul S. Knoepfler)という准教授がおり、ウィキペディアによると幹細胞研究分野の「最も影響力のある50人」の一人に選ばれたような専門家であるとのことなのですが、そのノフラー先生のブログを見ると、この人が日本におけるSTAP細胞がらみのゴタゴタを最初からじっくり見ていたことが分かります。8月11日付のブログにはSTAP News From Harvard?という記事が掲載されており、バカンティ教授の休職について書かれています。何故か休職するバカンティ教授が同僚にあてたメールまで掲載されています。

“Dear Colleagues:

It is with somewhat mixed emotions that I share with you my decision to step down as Chair of the Department of Anesthesiology, Perioperative and Pain Medicine, effective September 1, 2014.”

というのがそのメールの書き出しです。自分が辞職を決定したことについては「皆さんも私も複雑な感情を抱いている」(mixed emotions that I share with you)と言っています。メールにはSTAPのことは一切出ていないのですが、ブログの書き手であるノフラー准教授はバカンティ教授の休職はSTAPと「関係があるかもしれない」(there could well be a connection)と言っている。そもそもノフラー准教授は、STAP問題をめぐるこの病院とハーバード大学医学部の態度には不信感を持っているようで

STAP細胞の論文について、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院とハーバードの医学部は何をやっているのか?STAPをめぐるゴタゴタについては、この2か所から何も聞こえてこないのだ。対照的なのは日本と理研だ。あちらからは止まることなく情報が流れてくるではないか。

What’s the deal with Brigham and Women’s Hospital or Harvard Medical School when it comes to the retracted STAP cell papers? I was just writing yesterday in part about how we haven’t really heard anything (news, statements, etc.) from those places about the whole STAP cell mess. In contrast, in Japan and at RIKEN there has been a non-stop flood of news and developments involving STAP.

と言っている。アメリカ側の沈黙がおかしいと思っていたらバカンティ教授が辞任するという噂が聞こえてきた・・・というわけです。

ノフラー准教授は前日(8月10日)付のブログで、論文が撤回され、笹井芳樹が亡くなってしまった現在

STAPをめぐる問題はこれからどこへ向かうのだろう?これでお終いということだろうか?

Where does the STAP story go from here? Is it over?

と言っている。准教授によると、STAP問題についてはいまだに答えが出されていない疑問(unanswered questions)が多くある。ブリガム・アンド・ウィメンズ病院とハーバードの医学部の「沈黙」もその一つです。

アメリカ側の2つの機関もSTAP問題についての調査を行っているけれど、結果が分かるのは来年(2015年)であろうとして次のように書いている。

(これらの2機関による)隠ぺい工作がないと仮定したとしてのハナシであるが、その調査結果は、今回のSTAPをめぐるゴタゴタを理解するうえでは貴重なものとなる可能性がある。が、私としてはあまり期待しない方がいいと言っておきたい。私の予想では今回のゴタゴタの責任の大半がハーバードではなくて日本側にあるとされてしまうということだ。

Assuming there isn’t a whitewash of the situation, the results of the potential Harvard investigation could be important for understanding the STAP mess, but I wouldn’t hold your breath on that. I expect blame to be largely deflected from there to Japan.

ノフラー准教授はさらにSTAP論文がNatureに掲載された経緯にも分からない点が多いと言っています。あれほどの欠陥だらけの論文が何故同誌のレビューを通ってしまったのか?Natureによる説明もあったけれど納得のいくものではなかった。STAP論文は、Natureに掲載される前にも同誌および他の専門誌によって掲載を拒否されたという。ではそれらの拒否された原稿はどこにあるのか?Natureを始めとする専門誌の審査担当者たちがSTAPという科学をどのように考えたのか?それらのことがはっきりしないと、問題が解決したことにはならないというのがノフラー准教授の主張です。

准教授によると、今回のSTAP論文は誤っていただけでなく、幹細胞(stem cell)という研究分野の評判をおとしめるものとなり、それによって多くの研究者のキャリアにキズがつき、スポンサーからの研究資金がストップしてしまったようなこともあった。しかし今回の騒動には良かった点もあるとのことで、

STAP論文の撤回が早かったこと、STAPに関する疑問が時をおかずに明らかにされたことによって、(幹細胞研究に対する)STAPから害が限定的で済んだことだ。

The fact that the STAP papers were retracted so quickly and that doubts were raised about STAP came out expeditiously, limited the harm from STAP greatly.

と言っています。またノフラー准教授また8月12日付のブログで、亡くなった笹井芳樹博士への追悼文を掲載、

笹井博士の業績はこれから何十年もの間、再生医療の研究にインスピレーションを与え続けるであろう。

his pioneering work will inspire regenerative medicine researchfor decades to come.

と言っており、准教授以外にも多くの科学者がこれに署名しています。

2014年8月25日 up date

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