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国際問題コラム「世界の鼓動」

「孤独」(loneliness)と「独り」(aloneness)の違い

賛助会員 春海 二郎

(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)

英国統計局(Office for National Statistics:ONS)が発表した数字によると、英国はヨーロッパ一番の「孤独の都」(loneliness capital)なのだそうです。「自分がピンチに陥ったときに個人的に頼れる人間がいるか」とか「隣近所に親しみを感じているか」という調査をしたところ、EU28か国の中で英国は下から3番目という結果だった。つまりそのような人はいないと感じている人が非常に多いということでもある。英国よりも下だったのは、デンマークとフランスだった。

このことについて6月22日付のThe Observerがバーバラ・エレン(Barbara Ellen)という女性コラムニストのエッセイを載せているのですが、

Loneliness is one thing. A happy loner quite another

寂しいということと、好きこのんで独りでいるということは違うハナシだ。

という見出しになっている。日本語にすると分かりにくい(とむささびは思う)けれど、中身を読むと、筆者が言いたいのは「寂しさ」(loneliness)と「独りでいる」(aloneness)ということを混同するべきではないということのようであります。

バーバラ・エレンは自分のことを「独りでいる方が自然な人間」(natural loner)であると感じることが多いのだそうですが、それは自分が子供のころに本ばかり読んで過ごしたせいで、「陰気(sullen)で非社交的(unsociable)、人間嫌いの雌牛(misanthropic cow)」になってしまったことを言い繕っているに過ぎないのかもしれないとも言っています。(何もそこまで卑下することはないと思うけれど)いずれにしてもalone(独り)ということがさして苦にならないのだそうです。

「独り」にも2種類ある。好きでそうなっているという「独り」と、環境がそうさせてしまっている、いわば「強制された独り」(enforced solitude)です。高齢、身体障害、家庭崩壊、失業などなどによって引き起こされる孤独は誰も望んでいるわけではない。

最初に紹介したEU諸国との比較に話を戻すと、その調査では「人生、生きるに値する」(life is generally worthwhile)と感じている人の割合についていうと英国は平均以上なのだそうです。となると「孤独な人間が多い」というのも「好きで独りでいる人が多い」とも解釈できる。つまり困難な状況に陥っても独力で解決することを望み、他人のプライバシーには立ち入らず、「過剰な仲良しや詮索的」(not over-chummy and intrusive)であることを避ける・・・これこそが英国流の近所付き合いなのだ、などと言うのは「ええかっこしい」(flippant)というものであろう、と筆者言っている。

実際には、英国においては「独りでいる人間」は憐憫の眼で見られたり、懐疑の眼差しを向けられたりすることが多い。いわゆる「社交性」は身につけるべきスキルとして尊重され、社交的でない人間は敗者もしくは変人と見られがちである。バーバラ・エレンの見るところによると、英国は小さな国の割には人が多すぎるのだそうです。

ただ、バーバラ本人は、独りでいることに我慢ができないような人は信用しないのだそうです。自分自身と共にいることに我慢できないような人間は、「群衆とともにいることで何を隠そうとしているのか?」(what are they trying to hide in the crowd?)ということです。

2014年6月29日 up date

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