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国際問題コラム「世界の鼓動」

ジャカルタ通信:「一生懸命、生きてるかいっ?」

ストリート・ミュージシャンたちの生きざま

  「JALANAN(街路の片隅で)」という音楽ドキュメンタリー映画を、「シネマ21」系列の映画館で観た。ふだんハリウッドの派手な娯楽作を系列館にかけている、この国最大の配給会社「シネマ21」が、観客動員のあまり期待できない、国産ドキュメンタリー映画を上映するのは異例のことだ。2013年釜山国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞したこの作品を観て感動した人びとの働きかけ、資金提供があって実現にこぎつけたようだ。

この映画の主人公は、ストリート・ミュージシャンである。ストリート・ミュージシャンと言っても、インドネシアでは街頭で歌うだけでない。乗合いバスや列車に乗りこんで、ラブソング、社会風刺が効いたロック、神を讃えるバラードを熱唱する。日本のバスや列車であれをやったら、あっという間につまみ出されるだろう。その点、この国は大らかだ。歌声に心を動かされたり、歌詞が気にいったりしたら、チップをはずむ観客(乗客)も少なくない。この大らかさゆえに確保された公共空間で、彼らは精一杯表現し、生きる糧を稼ぐ。

今や伝説のスーパースターと化した歌手イワン・ファルスも、ストリート・ミュージシャンとして人の心を動かす芸を磨いた。ジャカルタにはイワン・ファルスのように「ビッグ」になることを夢見るストリート・ミュージシャンが無数にいる。

映画予告

この映画の主人公、スディルマン通りを根城にする三人のストリート・ミュージシャンたちも、そんな夢を抱いてもがいている。男性のボニ、ホー、女性のティティ。その一人、一人が個性的で、魅力的だ。映画は5年間に渡って、彼らが生きた、それぞれの軌跡を記録している。(写真:3人の主人公とスディルマン通り 映画「JALANAN」より 映画予告篇はこちらhttp://www.jalananmovie.com/)

ボニと彼の妻は、スディルマン通りに架かるコンクリートの橋の下で、同じような境遇の下層民とともにホームレスな生活をしている。ボニは子どもの頃から路上生活をしている。貧しさゆえに苦労に苦労を重ねている母の姿を見て、母を助けて働こうと子どもながらも決意した。以来、スディルマン通りの路上で小銭稼ぎをするようになった。母は学校に行けと言ったが、母だけに重荷を背負わせることはできないと進学をあきらめた。いつしかギターの弾き語りを覚えて、今はそれで生活している。

現在30代のボニの過去はストリート・チルドレンであったとすると、25年前に心痛んだ街頭で働く子どもたちの一人が彼であったということになる。未だに貧困から離脱できない彼の人生。でも、未来を信じて、どっこい生きている。

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2014年4月18日 up date

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