NPO法人 アジア情報フォーラム

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国際問題コラム「世界の鼓動」

レイプの被害者が加害者を赦した理由

賛助会員 春海 二郎

(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)

1月9日付のBBCのサイト(UKセクション)に

Rape victim meets attacker to forgive him

という見出しの記事が出ています。「レイプの被害者が加害者と面会、加害者を赦すことを伝えた」というニュースです。記事を読みながら「日本ではこんなことあるだろうか」と考え込んでしまったので、むささびジャーナルをお受け取りの皆さんにも紹介することにしました。

被害者はカーチャ・ローゼンバーグ(Katja Rosenberg)という現在40才になる女性で、レイプ事件が起こったのは8年前の2006年ことですが、加害者(犯行当時は16才)との面会が実現したのは昨年(2013年)のことです。彼女によると、事件のあと「本能的に(intuitively)加害者に会わなければならないと感じた」のだそうです。レイプされたことについて彼女が感じたのはトラウマではなかった。彼女がBBCに語った言葉をいくつか紹介すると:

とてもとても悲しいとは感じたけれど、アタックされたという感じがしなかったの。I felt very, very sad, but I didn’t feel attacked.

人生、本当にいろいろなのよね。何故とても褒められたものでないことをやってしまうような人がいるのか・・・世の中どこかおかしいと思ってしまったわ。どうしていいか分からない人もいるってことよね。ハッピーな生活ならあんなことするわけないものね。 Life deals very different cards to all of us, and why somebody does something which is not applaudable – it was more about thinking, something’s wrong with society. Some of us don’t know where to go. You wouldn’t ever do that if you felt happy.

加害者は実はカーチャを襲ったあとにもレイプ事件を起こしており懲役14年で服役中なのだそうですが、なぜ加害者に会いたいと思ったのかについてカーチャは「人生希望なしというわけではない」(life’s not hopeless)ということを伝えたかったとのことで、次のように言っている。

自分ならそれが言ってあげられると感じたの。それと面会することで、自分でも(このことに)何らかの終止符を打つことになるのではないか、と。ごめんなさいと言ってもらいたいと思ったわけではないの。一緒に同じ方角、平和と赦しという方向に歩いていければいいな、と、なぜかそう思ったの。

I just felt I could give that. I also thought the exchange would be good for me to somehow get some kind of closure – I mean, I didn’t really need a ‘Sorry’, but it was somehow just good to see that you walk into the same direction of peace and forgiveness together.

カーチャと加害者との面会は「修復的司法」(restorative justice)と呼ばれる制度によって実現したのだそうですが、ウィキペディアによるとこの制度は

犯罪に関係する全ての当事者が一堂に会し、犯罪の影響とその将来へのかかわりをいかに取り扱うかを集団的に解決するプロセス、又は犯罪によって生じた害を修復することによって司法の実現を指向する一切の活動を言う。

となっており、日本では採用されていないのだそうであります。

2014年3月11日 up date

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