NPO法人 アジア情報フォーラム

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国際問題コラム「世界の鼓動」

歩行者を取り戻そう!

賛助会員 春海 二郎

(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)

8月3日付のThe Economistによると、ロンドンでは場所を移動するのにクルマにも地下鉄にも乗らず歩く人が増えているのだそうですね。2010年から2011年にかけて行われた調査によると、ロンドンの住人のほぼ3分の1が、1週間に一度は30分以上かけて徒歩で移動すると答えているのだそうです。健康増進を目的とする「ウォーキング」ではありません。場所の移動に足を使う人が多いということです。2001年と2011年の10年間で歩行者の数が12%増加しているという数字もある。

いろいろと理由は考えられる。まずロンドンの人口そのものが730万(2001年)から820万(2011年)へと増えており、地下鉄が以前以上に混雑している。もう一つ、ロンドンの市当局が徒歩を奨励しているということもある。約10年前の2004年に当時の市長だったリビングストンがロンドンを「歩ける町」(walkable city)にしようという計画を立て、これがボリス・ジョンソン現市長にも受け継がれている。例えば歩行者に分かりやすい地図を作ることで、わざわざ地下鉄に乗らなくても歩けそうなところは歩くことを薦めたりしている。

さらに目立ちにくいけれど、道路そのものを歩行者にとって使いやすくしたということもある。歩道と車道を隔てるでっぱり(pavement curbs)が取り払われたし、道路舗装のための材料も歩行者に優しい花崗岩のレンガを使っている等々、それなりに涙ぐましい努力をしてきている。

ただThe Economistによると、ロンドンの徒歩ブームは必ずしも全国的な傾向とは一致していない。全国的に見ると、過去約20年間で「歩く英国人」は27%も減っているのだそうです。子供が歩いて通学しなくなった、買い物へ行くのにクルマを使うようになった・・・理由はさまざまです。最近では足もクルマも使わないオンライン・ショッピングが盛んになったりしている。

ただ、日本と同じく英国でも地方の都会では町の中心部がさびれつつあり、地方自治体としてはこの傾向に何とか歯止めをかけたい。そのためには歩行者を呼び戻す必要がある。The Economistはそんな地方都会はロンドンを見習ってもいいかもしれないと言っています。ロンドン交通局の調べによると、歩く人たちが費やすお金が一か月平均で373ポンド(約5万円)なのに対して、クルマを使って町を通る人の場合は226ポンドだそうです。なるほど・・・だいぶ違いますね。

2013年8月12日 up date

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