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賛助会員 春海 二郎
(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、
ウィリアム王子とキャサリン妃の間に第一子が誕生した日に、ラジオのニュースショー番組(もちろん日本の番組)を聴いていたら「視聴者が選ぶ本日の重大ニュース」のトップに英国のロイヤルベビー誕生が来ていたのには驚きました。外国の王室のことなのになぜそれほど興奮するのか?と首をかしげてしまったのはむささびだけではなかったと思うけれど、実は日本以上に大騒ぎであったのがアメリカのようであります。Telegraphのワシントン特派員であるピーター・フォスターという人が自分のブログで「誇り高き共和制論者であるはずのアメリカ人が英国王室のこととなると大興奮に陥るのはなぜなのか」(Why American, proud republic, swoons over our royals)を語っています。
フォスター記者によると、ロイヤルベビーについては生まれる前からアメリカのテレビメディアは大騒ぎで、キャサリン妃が入院している病院の前からの「生中継」がさんざ放映され、あの日(誕生の日)はCNNが「特報」(breaking news)として伝え、まるで戦争でも始まったのではないかというような騒ぎだった。おそらく記念品の類の市場規模は2億2500万ドル(225億円)くらいになるらしいけれど、かなりの部分をアメリカ人が買うのではないかと言われているのだそうです。
アメリカと言えば、その昔(1776年)英国からの独立戦争を戦って勝利した歴史を誇りとしているはずで、それが今でもTea Partyという保守勢力に受け継がれている。この人たちは独立宣言をそらで暗記しているくらいである。なのになぜ英国のロイヤル・ファミリーのことと言うと大騒ぎするのか、アメリカ人に聞いてみた。
最も多かった意見は「アメリカ人が単純に騒ぐことが好き(simple American love of pomp)」ということですが、それに加えてアメリカ人が英国という国に対して抱いている、「口では説明しにくい愛着の念」(latent affection)があるとのことです。
それから「ディズニー効果」(Disney effect)というのを語る人もいるのだそうです。アメリカは歴史的にも「君主」などというものは拒否したはずなのですが、お陰で「お姫様」というとディズニーランドにあるプラスチック製のプリンセスが唯一の「お姫様」ということになってしまった。それがダイアナ妃とかキャサリン妃のような「本もの」が出てくると、もうたまらないというわけであります。
それとアメリカ人には英国に対する一種の「あこがれ」(fantasy)のようなものがある。第1次大戦のころの英国貴族の生活ぶりを描いた英国のテレビ・ドラマ、『ダウントン・アビー ~貴族とメイドと相続人~』はアメリカでも大人気であったそうですね。ヒラリー・クリントンも惚れ込んだらしい。