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会員 松澤 寛文(育桜会理事長)
私たちのNPO法人「育桜会」はバルト三国のひとつ、リトアニア共和国のカナウス市の公園で、9月8日、同共和国独立100周年記念と日本との一層の友好親善を図ることを目的に、50本の桜の植樹式を行った。
この植樹行事にはカウナス市のモティヨ・シャイティス市長、リトアニア最古の歴史を誇る国立ヴィータウタス・マグヌス大学関係者、さらにカウナス市民など約300人と日本側の山崎史郎在リトアニア大使や育桜会関係者のほか、リトアニアと歴史的に関係の深い岐阜県の河合孝憲副知事、金子正則・八百津町長など約100人が参加し、それぞれの代表が挨拶で、両国交流の意義と喜びを語った。
岐阜県とカナウス市は第二次世界大戦中、ナチ・ドイツの迫害から逃れてきたユダヤ人難民に対し、「命のビサ」を発行した当時の同地日本領事館の杉原千畝領事代理が岐阜県・八百津町出身であることから、特別な関係にあり、その縁で今回の交流行事に参加した。杉原千畝は、世界のユダヤ人から「日本のシンドラー」として今も尊敬されているが、育桜会は昨年、独立100周年と9月2日からスタートした「杉原ウイーク」に合わせ、両国友好の象徴として桜植樹を提案したところ、カナウス市は市を流れる川の広大な中洲に、カナウス・日本友好公園を建設してくれ、およそ一年がかりの準備を経て今回の植樹式にこぎつけた。
桜の苗木はドイツで調達したが、日本国内とは違いかなり高額の費用が必要となり、多くの支援者、団体のご協力を得たことから、そのことを記した記念のプレートが設置され、寄付者の名前も苗木につけられた。また、これとは別に、集まった寄付金の一部(約40万円)で日本関係の英語版書籍を購入し、上述国立大学に寄贈した。
多くの日本人にとっては杉原逸話以外にリトアニアはまだ少し遠い存在だが、リトアニア人は誰もが日本(ヤポーニア)をよく知っていることにも触れておきたい。100年以上前の1906年、若干27歳のリトアニア人青年が三巻の日本論を書きました。第一巻「日本今昔」、第二巻「日本人の暮らし」、第三巻「日本の政治構造」。瞬く間にベストセラーとなります。この本を書いたリトアニア人は、ステポナス・カイリース(本名ステポナス・トマソーニス)。日本を訪問した経験もない27歳の青年でしたが、何故このような日本論を書けたのか。その理由は、日露戦争に於いて帝政ロシアのバルチック艦隊を撃破し勝利した日本とは一体どんな国なのかという好奇心に始まり、深まる興味とともにますます心を惹かれるようになり、遂に後世に残る本を書き上げました。リトアニアの歴史はドイツに占領されたり、ソ連邦に組み入れらたりの波乱に満ちたものですが、小国として近隣の強国に支配された悲哀が日本へのあこがれにつながったのでしょう。
こんな歴史秘話も胸に抱きながら、リトアニアを訪れる機会がございましたら、カウナス市に造成されたカウナス・日本友好公園に是非足をお運び頂ければ幸甚に存じます。