「激動のアジア外交とともにーー外交官の証言」（中央公論新社）

本書は池田維・理事長の４０数年に及ぶ外交官生活で、自身が直接交渉、関与された数々のテーマに関する証言をまとめたものである。内容は表題にあるように対アジア関係を中心としているが、氏は外務省のいわゆるチャイナ・スクール出身で中国課長、アジア局長などを歴任されたことから、日中国交回復やそれ以降の歴史認識問題、尖閣諸島問題、さらにカンボジア紛争の平和解決などに関する重要な証言が多く含まれている。

また、氏が駐オランダ大使時代に取り組まれた日本占領時代のインドネシアでのオランダ人慰安婦問題解決への交渉の経緯や、外交官としての最後の任務となった交流協会代表としての台湾在勤時代の日台関係の発展に関する多くの証言も盛り込まれている。

外交官としてのこれらの足跡はいうまでもなく今日の日本とアジアの関係を考察する上で極めて貴重な記録であるばかりでなく、この地域の今後の動向を分析するためにも大いに参考になる内容となっている。全体がオーラルヒストリーという口述形式で、大変読みやすくなっており、多くの読者の期待に沿うものと確信する。

（アジア情報フォーラム・事務局）

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