NPO法人 アジア情報フォーラム

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第3回日台民間対話に関する報告

アジア情報フォーラム(AIF)は9月2日、台湾のシンクタンク・中華経済研究院関係者(扶桑会)との東アジア情勢などを巡る意見交換会(日台民間対話)を東京・霞山会館で開催した。この日台民間対話は過去二回、AIF関係者が台湾を訪問して行ってきたが、第3回目の今回は中華経済研究院の関係者(扶桑会)が来日し、東京で開催したもので、折から国会で最終的審議を迎えている安倍政権の安保法制や減速の目立つ中国経済の動向を中心に活発な論議が展開された。

池本会員撮影

(池本会員撮影)

安保法制への支持と中国経済への懸念

安保法制を巡っては台湾側が「民意は反対派が多いようだが、国家の政策と民意はどう折り合えるのか」と問題を提起したが、日本側は「1960年の日米安保改定や湾岸戦争後に海自が機雷掃海艇を派遣した際にも、世論は反対の声を上げたが、それでも結果的にはその意義は理解された」と述べ、海洋覇権を強める中国や核開発を進める北朝鮮の動向から「安倍政権は支持率が下がっても、今回の安保法制を成立させることが重要だ」、と指摘した。また「日本では一般的に平和にはコストがかかるという意識が薄い。安全保障の問題は米国を頼り、自ら真剣に考えることをしてこなかった」とか「日本の各メディアには一定の思想的な傾向があり、世論調査にもその傾向が反映されていることに注意する必要がある」という意見も表明された。これに対し台湾側は「台湾でも危機意識が足らない。地域の平和発展には、日米台の結束が一層重要になってきている」との認識を示した。この関係で日本側は戦後70年の安倍談話を取り上げ、アジアの近隣各国に与えた犠牲への反省内容に「台湾が初めて盛り込まれたことに十分留意すべき」と強調した。

台湾で来年1月に予定されている総統選に関しては、日本側、台湾側も、昨年の地方選挙で国民党が惨敗したことで、「野党の民進党の勝利はほぼ確実になってきた」という見方で一致したが、これに関し台湾側は「同地方選の結果に中国は大きな衝撃を受けたと思う」と述べ、「台湾の中南部では中国への敵対意識が強いため、中国は多様な懐柔を仕掛けている」という内情を明らかにした。

また、近年の台湾社会の変化にも言及し、「台湾の政治動向を分析する際に、国民党、民進党という従来の枠組みでのみ語ることはもはや不適切である。本省人、外省人との区別も適当ではない。若い世代を中心に多くの人々に台湾人という意識が強まっている。日本はこのことをもっと理解してほしい」と期待感を示した。さらに、日台交流の一層の活発化の必要性も共通認識として取り上げられ、とくに「日本の学生の台湾留学をもっと増やしていかなければならないし、台湾も日本への留学生を増加させることに取り組んでほしい」と、若者同士の交流の重要性が指摘された。

もう一つの議論のテーマとして双方とも重大な懸念を示したのは、中国経済の行方である。日本側は「減速が目立つ中国経済には世界が心配している。これまでの経済モデルはもう通用できなくなっており、近年の人件費の高騰で撤退する企業も多い。競争力は完全に失いつつある」と述べ、「世界の工場という中国の地位は終わりつつある」との見方が支配的である と語った。

これは中国が今やいわゆる「中進国の罠」にはまっているとする認識を表明したものだ。そのうえで、「経済成長のデータなど中国政府の発表する統計や国営企業には不透明さが否定できないし、構造改革などの課題は多い」とし、楽観は決してできないと警戒を訴えた。台湾側はこれにほぼ同調しつつ、「これまでの加工貿易ではどの国も経済成長を図ることはできなくなっている。GDP(国内総生産)に占める貿易の割合はごくわずかであり、付加価値の高い製品や技術的イノベーション、知的財産権などの分野で競争力を高めていくことが不可欠であるとの見解を表明した。

 

今回の日台対話の参加者は以下の通り、

 

AIF参加者

池田維理事長、石川弘修副理事長、古庄幸一理事、山崎邦生理事、工藤政博監事、下荒地修二会員 岩永康久会員、高寛会員、池本好伸会員、松澤寛文会員 清本修身事務局長

 

中華経済研究院側(扶桑会)参加者

彭榮次(元亜東関係協会会長)、何美玥(元行政院経済部長)董烱熙(能率集団総裁)、鄭文哲(世紀貿易会長)、洪星程(国総創業投資名誉会長)顏平和(元亜東関係協会副秘書長)、張善評(楽神電子副社長)、蘇顯揚(中華経済研究院主任)、黃瑞耀(対日産業技術促進会理事)、洪宜民(中華経済研究院東京事務所副所長)

 

(文責 AIF事務局 )

2015年9月24日 up date

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