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『戦後米国の沖縄文化戦略 琉球大学とミシガン・ミッション』著者メッセージ
会員 小川 忠
いまや「沖縄の顔」ともいうべき観光名所、首里城。かつて、この地に大学が存在し、沖縄の青年たちが群れ集っていたことをご存じだろうか。しかも、それは戦前から県民が熱望した沖縄史上初の大学であり、大学を創設したのは戦後沖縄を27年にわたって支配した米軍であったということを。
米軍政は、冷戦を戦う必要上から、対知識人対策として1950年に琉球大学を創設した。新生大学支援のため、米陸軍省はミシガン州立大学と委託契約を結び、同大学の教員が琉球大学に顧問団として51年から68年まで派遣され指導・助言を行った。琉球大学関係者のあいだでは「ミシガン・ミッション」として知られている
ミシガン・ミッションは、陸軍省や沖縄の米軍政当局に向けて、学内動向を定期的に報告していた。本書は、近年沖縄県公文書等で公開され始めたこれら資料等を読み解くことで、琉球大学に秘められた米軍政の文化戦略を記述し、それがどのような過程をへて構築・展開され、これに対して沖縄の知識人や青年はいかなる反応を示したのかを描写する。
さらに、米国の沖縄文化戦略が現在の沖縄のアイデンティティーにいかなる影響を及ぼしたのかを検討し、米国・日本・沖縄の関係性を歴史的な視点から再照射してみたいと考えている。東アジアの国際関係における緊張が高まる昨今、読者があらためて「沖縄とは何か」という問いを考える際の一つの素材になれば幸いである。