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マラリアを始めデング熱、ジカウイルス感染症など、最近は「蚊」によって媒介される感染症の病名をよく耳にします。日本国内での感染例は殆ど見られませんが、交通手段の発達によるグローバル化と共に輸入症例が報告されるようになってきました。
今回はこの「蚊が媒介する感染症」についてお話しし、その予防策、注意点などについても述べたいと思います。
これにはどのような病気が含まれるのか、日本に持ち込まれ又日本で発生する可能性の高い代表的なものを表1に示します。
表1 四類感染症の対象疾患となっている主な蚊媒介感染症
疾患名 |
媒介蚊 |
発生地域 |
潜伏 期間 |
主な症状 |
備考 |
ウエストナイル熱 | アカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカなど (鳥→蚊→人) |
アフリカ、ヨーロッパ、中東、中央アジア、西アジア、米国など | 2~6日 | 発熱、頭痛、背部痛、筋肉痛、筋力低下、食欲不振、発しん | 日本国内での感染例は認められていないが、近年まで報告のなかったヨーロッパやアメリカなど西半球に1990年代中頃から流行が発生している。 |
ジカウイルス感染症 | ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなど (人→蚊→人) |
中南米・カリブ海地域、オセアニア太平洋諸島、アフリカの一部、タイ | 2~12日(多くは2~7日) | 軽度の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、斑丘疹、結膜炎、疲労感、倦怠感など | 日本国内での感染例は認められていない。ギラン・バレー症候群や小頭症との関連が疑われている。性行為による感染例あり。 |
チクングニア熱 | ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなど (人→蚊→人) |
アフリカ、南アジア、東南アジア | 3~12日(多くは3~7日) | 急性の発熱と関節痛、発しん | 日本国内での感染、流行はないが、海外で感染した輸入症例が報告されている。 |
デング熱 | ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなど(人→蚊→人) | 東南アジア、南アジア、中南米、カリブ海諸国 | 2~15日(多くは3~7日) | 発熱で始まり、頭痛、眼窩痛、筋肉痛、関節痛 | 非致死性の熱性疾患であるデング熱と、重症型のデング出血熱やデングショック症候群の2つの病態がある。 |
日本脳炎 | コガタアカイエカ (豚→蚊→人) |
日本、中国、東南アジア、南アジア | 6~16日 | 発熱、頭痛、吐き気、おう吐、めまい、意識障害 | 感染しても日本脳炎を発病するのは100~1,000人に1人程度であり、大多数は無症状に終わる。 |
マラリア | ハマダラカ (人→蚊→人) |
東南アジア、アフリカ、中南米 | 7~40日 | 発熱、悪寒、倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛 | マラリア原虫の種類によって、熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリアに分類される。これらのうちもっとも危険なのが熱帯熱マラリアで、治療が遅れると死に至ることがある。 |
東京都感染症情報センターによる
上記疾患で治療薬があるのはマラリアだけで、罹患した場合は抗マラリア薬を投与します。それ以外のものは、対症療法が主体となります。
①予防注射:日本脳炎に対しては予防接種(不活化ワクチン)が可能です。
②予防内服:マラリアは予防内服薬があり、流行地へ行く際は是非処方して貰っておいた方が良いでしょう。特にマラリアで重症化する「熱帯熱マラリア」が対象で、流行地であるサハラ以南のアフリカに滞在する場合が対象となります。何種類かありますが、早いものでは数週間前からの投与開始となりますので、早めにトラベルクリニックなどに相談しましょう。
③防蚊対策:流行地域で蚊に刺されないことが基本です。
▶ 皮膚が露出しないように、長袖シャツ、長ズボンを着用し、裸足でサンダルを履かないようにする。
▶ 薄手の繊維の場合には服の上から吸血されることもあるので、薄すぎないよう注意する。
▶ 足首、首筋、手の甲などの小さな露出面でも吸血されることがあるので注意する。
▶ 忌避剤。防蚊対策として有効性が証明されている忌避剤の成分は、「デイート」と「イカリジン(ピカリジン)」の2種類がある。デイートは忌避剤の成分として最も用いられており、国内では含有率12%までのエアゾール、ウエットシート、ローション又はゲルを塗るタイプのものが市販されている。イカリジンは、2016年3月以降それを主成分とする忌避剤が発売されるようになっている。両者の忌避剤は、発汗が著明な場合は、有効時間(例えばイカリジンは6時間)にとらわれずこまめに塗布する必要はある。
▶ 海外渡航時の対策
ネッタイシマカやヒトスジシマカは、都市やリゾート地にも生息しており、特に雨季にはその数が増える。またこれらの蚊の習性は、早朝・昼間・夕方(特に日没前後)に活発に吸血することである。蚊対策はその時間帯に重点的に行う必要がある。また屋外だけでなく屋内で吸血されることも多い。
▶国内での対策
国内にネッタイシマカは生息していないが、ヒトスジシマカが「生息している。前項同様朝方から夕方まで吸血するので、その時間帯は特に防蚊対策を行う必要がある。ヒトスジシマカは屋外で吸血されることが多い。
▶ 殺虫剤や蚊取り線香など時によっては昆虫成長制御剤(IGR)を用いると良い。また雨水などが溜まっている場所や容器があれば、1週間に1度は溜まった水を捨てるよう心掛ける。屋内では蚊取り線香や蚊帳も有用と思われる。
以上です。これらを参考に「蚊」媒介感染症にかからないよう注意して下さい。