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賛助会員 春海 二郎
(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)
6月21日(水曜日)、新しい国会の始まりというわけで、下院・貴族院の両議員を前に女王のスピーチが行われました。普通ならエディンバラ公と夫婦で参加する儀式なのですが、エディンバラ公(96才)が入院したため女王(91才)は長男のチャールズ皇太子を連れてやってきたようです。女王のスピーチは時の政府の政策のアウトラインを説明するもので、日本で言うと首相の施政方針演説にあたるのですが、女王は「私の政府」(my government)の施政方針を説明するという形をとる。演説は、ここをクリックすると動画で見ることができ、ここをクリックすると文字で読むことができます。
今年の演説の出だしは次のようになっている。
私の政府にとっての優先事項は、英国がEUを去るにあたり、英国にとって最善の条件を確保することにあります。私の大臣たちは、国会および自治政府、ならびに産業界その他の人びとと共に働き、EUの外における我が国の未来にとって出来る限り幅広い合意(コンセンサス)を作り出すことに責任をもって取り組もうとしています。
My government’s priority is to secure the best possible deal as the country leaves the European Union. My ministers are committed to working with Parliament, the devolved administrations, business and others to build the widest possible consensus on the country’s future outside the European Union.
このような出だしであることからしても、女王のスピーチ(メイ政権の政策)の中身は圧倒的にBREXITを成功させることに重点を置いたものになっているのですが、保守派のオピニオン・マガジン、The Spectatorの「分析」によると、この演説は「何が語られたか」よりも、「何が語られなかったか」を考える方が面白いとして
女王のスピーチでドナルド・トランプの国賓訪英についての言及がないということは、彼の訪英そのものに疑問符がついたということだ。
Donald Trump’s state visit to the UK is in doubt after there was no mention of it in the Queen’s Speech
と言っている。スピーチの終わりの方に次のようなくだりがある。
フィリップ殿下と私はスペインのフェリペ国王ならびにレティジア女王が7月に国賓としてお見えになることを楽しみにしております。
Prince Philip and I look forward to welcoming Their Majesties King Felipe and Queen Letizia of Spain on a State Visit in July.
スペイン王室による国賓訪問には触れられているのに、トランプのそれには全く触れられていない。今年1月下旬にメイ首相がワシントンを訪問した際、トランプを国賓として英国に招待したはずなのに・・・。どう考えても奇妙です。
ただ最近(6月11日)のGuardianに出ていた記事によると、トランプがメイさんに電話をしてきて、「自分が訪英した際に大規模な反対デモなどが行われるのであれば、訪英を見送りたい」と告げたというわけ。そういえば、トランプの国賓待遇については、これに反対する署名活動が行われたりしたのですよね。