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国際問題コラム「世界の鼓動」

世界は何を心配しているのか?

賛助会員 春海 二郎

(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)

世論調査機関のIPSOS-MORIのサイト(11月15日)に “What Worries the World”(世界の心配事)という名前で世界の25か国の人びとを対象に行われた意識調査の結果が出ています。65才以下の成人を対象に「現在最も心配していることは何か?」(what are the issues that most worry them?)というのと、「自分の国において、物事が正しい方向に進んでいると思うか?」(whether they think things in their country are headed in the right direction)という質問をしたものです。

調査対象国のリストなどの詳細はここをクリックすると出ていますが、調査が行われたのが10月7日であることに注目するべきかもいれない。、英国ではEU離脱の国民投票が行われてから約3か月後、アメリカの大統領選でトランプが勝利する1か月前の意識調査であるということです。

具体的な心配事(例:貧困・テロ・福祉・教育など)については国によって違うので、あとから紹介するとして、物事がまともな方向に進んでいるかどうかという一般論については、世界平均が6:4の割合で悲観論が勝っている。むささびが特に関心を持ったのは、リオ五輪から2か月後のブラジルの人たちの意識なのですが、フランスと並んで殆ど「異常」と思われるほど悲観的な見方が多い。オリンピックを実施したからといって将来について楽観的になるとは限らないけれど、招致した人たちの気持ちがそこにあったことは事実なのでは?逆に日本などから見ると信じ難いほど楽観的なのが中国とサウジアラビアです。実際にはインドもサウジと似たような数字なのですが、、どちらかというと経済成長と強権政治が目立つ国の人びとは「楽観的」な見方をしがちであるってこと?

英国の場合、60%:40%で悲観論が勝っているのですが、実は楽観の数字は調査が行われるひと月前には44%だったのだそうで、BREXIT直後の盛り上がりが下降線をたどっていることが分かると主宰者は言っています。ただそれでも英国人の楽観主義は他のEU加盟国やアメリカよりは高いのです。アメリカの「悲観主義」は、この調査が大統領選のちょうどひと月前におこなわれたものであることで説明がつく・・・というのは考えすぎ?

それぞれの心配事
日本 中国
アメリカ 英国

では現代人は何について最も憂慮しているなか?こればっかりは国によって違うのですが、平均をとるならば、一番の共通項は「失業」です。英国の場合は「移民の増加」がトップに来るのですが、フランスとドイツでもこれがトップ3に入っている。変わっている(と思う)のが中国で「モラル低下」がトップにきている。これがトップ3の中に入っているのは中国だけ。アメリカ人の心配事のトップにきている「テロ」ですが、トルコ、イスラエル、インド、フランス、ベルギーなどでもトップ3に入っているけれど英国の場合は第4位にきている。

この調査で面白いのは、それぞれの「心配」(worry)と「現実」(reality)の間にギャップがみられるケースがあるということです。例えば韓国では57%の人が「失業」がトップに来ている。これは南アと同じような数字です。でも韓国における実際の失業率は4%にすぎず、南アの25%とは大違いというわけです。

また「移民」についても感覚と現実の間に微妙なギャップがある。ドイツ人の38%がこれを心配しており、心配度世界一なのですが、ドイツの人口に占める移民の割合は15%です。これに対してカナダの場合、移民の割合は21%でドイツよりは高いのに「心配だ」という人の割合は17%に留まっている。

2016年11月27日 up date

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