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国際問題コラム「世界の鼓動」

「英国は特別、だからEU残留」!?

賛助会員 春海 二郎

(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)

英国がこれからもEUに加盟し続けるかどうかの国民投票が今年の6月23日(木曜日)に行われると発表されました。もともと2017年末までには実施するとされていたものが前倒しになったということです。

英国がEUを離脱するのかどうかについてEUの首脳(キャメロン首相も含む)が集まって会議を開いた結果、EUとしては英国の離脱を回避するためにキャメロン首相が求めていたEUの改革案に合意しました。キャメロンがEUに対して求めていた「改革」にはいろいろあるけれど、最も重要な部分はEU設立の趣旨として決められていた「政治統合を目指す」を英国に対しては適用しないということにある。そのあたりに英国以外のEU加盟国が同意したということです。

キャメロン首相は現地時間の2月19日の深夜に記者会見を行って「EU内で英国の特別な地位を勝ち取った」という趣旨の声明を発表しました。キャメロンとしては「これでEU残留に向けて英国民を説得できる」と言ったつもりであるわけです。会見におけるキャメロンの声明文は首相官邸のサイトに出ていますが、キャメロンがEU残留に向けて英国民を説得できると考えている(とむささびが思う)ポイントを列挙してみます。

1)英国はますます接近する統合ヨーロッパからは永久に離れた立場に立つ。すなわち国家を超えた国家としてのヨーロッパの一部になることは絶対にないということだ。
Britain will be permanently out of ever closer union ? never part of a European superstate.
2)EU圏内からの英国への移民が英国の福祉制度にアクセスするについては、これまで以上に厳しい制約が設けられることになる。すなわち「ただ乗り」の時代は終わったということだ。
There will be tough new restrictions on access to our welfare system for EU migrants ? no more something for nothing.
3)英国がユーロに参加することは絶対にない。我々は英国の経済を守るために必要な手段を確保したのであり、ユーロに参加することなしに、自由貿易に基づく単一市場を運営していくルールについては完全なる発言権を確保した。
Britain will never join the Euro. And we have secured vital protections for our economy and full say over the rules of the free trade single market while remaining outside of the Euro.
4)これで英国がEUに留まることを薦めるには十分であると信じている。両方の世界のいい点を確保することができるのだから。
I believe it is enough for me to recommend that the United Kingdom remain in the European Union ? having the best of both worlds.
5)我々は自分たちの役に立つヨーロッパの部分に参加し、我々に影響を与えるような決定に影響を与え続けることになるだろう。我々こそは世界最大の市場の運転席に座り、なおかつ人びとの安全を保つために行動を起こす能力を備えているのだ。
We will be in the parts of Europe that work for us, influencing the decisions that affect us in the driving seat of the world’s biggest market and with the ability to take action to keep people safe.
6)そして我々は自分たちにとってはためにならないヨーロッパの一部にはならないだろう。すなわち国境線の開放には参加しない、(財政難に陥った国の)支援にも参加しない、ユーロには参加しない・・・英国が参加を望まない如何なる計画にも参加しないということだ。
And we will be out of the parts of Europe that don’t work for us. Out of the open borders. Out of the bailouts. Out of the Euro. And out of all those schemes in which Britain wants no part.

というわけです。で、これから本格的な運動が始まるわけですが、BBCのサイトによるとキャメロン政権の閣僚28人のうち6人が「離脱賛成」の意見を表明している。「残留賛成」はキャメロン首相、オズボーン財務相、メイ内務相など主要閣僚が含まれています。

2016年2月21日 up date

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