NPO法人 アジア情報フォーラム

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国際問題コラム「世界の鼓動」

世界平和度指数が語るもの

賛助会員 春海 二郎

(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)

国際的な研究機関である平和経済研究所(Institute for Economics and Peace:IEP)が発表した2015年の世界平和度指数(Global Peace Index)は、現在の地球がどの程度「平和」なのかを数字で表しています。例えば

  • 昨年(2014年)1年間、世界各地で発生した紛争のために費やされたコストは14兆3000億ドルですが、これは世界のGDPの13%にあたり、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、スペイン、英国のGDPを合わせたのと同じ数字です。
  • 世界的な傾向として言えるのは国内紛争の激化傾向であり、これによる死者は2010年では4万9000人であったのが、昨年は18万人にまで増えている。
  • テロで殺された人の数は2013年の1年間で1万8000人、前年比で61%の増加です。そのほとんどがイラク、アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリア、シリアにおける数字です。
  • 2014年の調査時に比べて81カ国が「より平和」(more peaceful)、78カ国の「事態が悪化」(deteriorated)している。
  • 世界で最も平和な地域はヨーロッパでベスト20のうち15カ国がヨーロッパの国です。
  • 世界で「最も平和でない」(least peaceful)地域は中東と北アフリカで、テロ活動が最も盛んであり、国内の反政府運動も盛んに行われている。

IEPでは毎年、調査対象となった国の「平和度」を数字化してランキングを発表しています。これは例えば「近隣諸国との関係」「武器の輸出入」「暴力的なデモの可能性」など23項目にわたる平和に関係のありそうな基準について各国のスコアをつけ、全部を平均したものを総合スコアとしてそれぞれ比較してランク付けするものです。5段階評価で、数字が低いほど平和度が高いということになる。例えば2015年の平和度第1位のアイスランドの場合は「外国での紛争に参加」と「武器輸入」が[2.0]である以外はすべて[1.0]で、総合スコアは[1.148]となっている。

日本は総合スコアが[1.32229]で162カ国中の第8位。多くの基準が[1.0]なのですが、重火器の所有件数のスコアが[2.6]、さらに「隣国との関係」が[3.0]と極めて悪かった。英国は総合スコアが[1.685]の第39位、アメリカは[2.038]の第94位、中国は[2.264]で第124位などとなっています。平和度が最も低かったシリアは[3.645]となっている。ここをクリックすると詳細を見ることができます。

今回の報告書には “POSITIVE PEACE” という見出しのセクションがあります。「前向きの平和」という日本語が適切かも知れない。そのセクションのイントロには次のように書かれています

平和とは単に紛争がない状態以上のことを指す。Positive Peaceとは、平和な社会の基盤を強固なものとする人びとの姿勢、社会的な構造、そして伝統・慣習などを指すものと理解することができる。この調査によるならば、Positive Peaceのレベルが高い国ほど反政府の抵抗運動などが暴力化する可能性が低く、自分たちの要求に対する妥協を国家から引き出す可能性が高い。

Peace is more than just the absence of conflict. Positive peace can be understood as the attitudes, structures and institutions that underpin peaceful societies. The research shows that in countries with higher levels of Positive Peace, resistance movements are less likely to become violent and are more likely to successfully achieve concessions from the state.

2015年7月26日 up date

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