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賛助会員 春海 二郎
(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)
BBCの海外放送(World Service)が毎年行っている国際世論調査に”Global Survey on Country Influence“と呼ばれるものがあり、むささびジャーナルでも一度だけ紹介したことがあります。世界中の人びとが自分たちのものも含めた国々についてどのような印象を持っているかを数字で示したものです。今回紹介したいのはその最近版で2013年から2014年にかけて行われた調査の結果です。
評価対象は16カ国+EUですが、アンケート調査には評価対象国も含めた24カ国、約2万4000人が参加しています。質問は、それぞれの国が世界に対して「良い影響力」(positive influence)を持っているか「悪い影響力」(negative influence)を持っているかというもの。調査結果(全体)は次のようになっている。
このグラフの中でむささびが注目するのは「イスラエル」です。最近、アメリカの世論調査会社であるギャラップが、「アメリカ人の外国観」(Americans’ Views of Foreign Countries)という世論調査結果を発表しているのですが、それによるとイスラエルは22カ国中の7番目に「好ましい国」とされている。なのにBBCの調査では16カ国中、下から4番目で、ロシアよりも低い。辛うじて北朝鮮を上回っており、アメリカ人とその他の外国人の対イスラエル観の違いがくっきり出ている。
次にBBCの調査の中から日・英・中だけを取り出して、それぞれが近隣諸国からどのように評価されているのかを紹介すると次のようになる。
中国と韓国による対日評価が圧倒的に低いわけですが、中国の場合は前年比で「好ましくない」が16ポイントも増えている一方で「好ましい」は17から5ポイントへと落ちている。BBCでは90%が否定的というのは「驚くべき数字」(astonishing)だとしています。
前年比でいうと、インドの対中イメージが多少悪くなっている(36%→33%)けれど、オーストラアリアでは2013年は「36:55」で否定的な見方が勝っていたのに2014年には「47:44」へと逆転して大いに上がっています。韓国の対中イメージは「32:56」で否定的なのですが、それでも前年に比べると肯定的な意見が9ポイントも伸びている。
英国について、フランス人は肯定的なのにドイツとスペインがそれほどでもないのですね。それからEU全体でも一応「好ましい」が勝ってはいるけれど、否定的な意見も4割を上回る。EU圏内における評価ではフランス、英国、ドイツの順で評価が高くなっています。英国への評価という点では、イスラエルとロシアで「分からない」が非常に多いのも面白い。決して否定的ではないのですが、それほど味方とも思われていないということ?
最後に紹介したいのは、それぞれの国の人たちが自分の国についてどのように評価しているのかに関する数字です。
自国への評価が最も高いのが中国であり、低いのはイスラエルというわけですが、むささびが注目するのは日本とイスラエルの「分からない」という部分なのであります。他国に比べると異常に高い。イスラエルの場合は電話、日本については直接面談で意見を聞いているのですが、「分からない」には「一概に言えない」(depends)「中立」(neutral)「分からない」(don’t know)という答えが含まれている。イスラエル人の場合は、国論二分というような状況にあるのではないかと想像するのですが、日本人の「分からない」は何なのでしょうか?韓国、英国、フランスなどは「分からない」が少なくて、自国への批判的な姿勢が(日本よりは)高い。日本人の「分からない」と「好ましくない」を足すとちょうど50%になる。