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国際問題コラム「世界の鼓動」

香港と台湾の「心」が掴めていない中国

賛助会員 春海 二郎

(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)


12月6日付のThe Economistのサイトに、中国と香港・台湾の関係についての記事が出ています。かなり長いもので、今の中国は香港や台湾の人びとの「心と気持ちを失っている」(Losing hearts and minds)と言っているのですが、両方の人びとの気持ちが中国から離れつつあるということですね。この記事はそのような現象の背景には「驚くほどの共通点がある」(The causes are strikingly similar)と言っている。

まず台湾。知らなかったのですが、台湾では11月末に統一地方選挙があったのですね。その結果、中国との経済関係の緊密化を促進する現政権党の国民党が惨敗、党の指導者である馬英九氏がその座を辞任する事態にまで発展してしまった。今回の地方選挙は全土の市町村の首長と議会議員を選ぶものであったのですが、The Economistによると、台湾の全人口(2300万)の6割を超える人びとが野党である民主進歩党(民進党)が支配する市町村で暮らすことになった。台湾における次なる総統選挙は再来年(2016年)の初めだそうです。

次に香港ですが、2か月ほども続いた大きなデモや座り込みも当局によって解散させられたのですが、学生の一部にはハンストという手段に訴える者も出てきており、「中国本国への反感は未だに高い」(Anti-mainland sentiments still run high)とThe Economistの記事は言っている。香港中文大学(Chinese University of Hong Kong)が10月に、香港で暮らしている人を対象に「自分は何者か」というテーマのアンケートを行ったところ、「中国人であってそれ以外ではない」(solely as “Chinese”)と答えたのは、わずか8.9%だった。香港が返還された1997年に同じアンケートをしたときにこのような答えが32.1%もあったことを思うとかなりの下落ではある。いちばん多いのが「香港人と中国人のあいのこ」(combination of Hong Konger and Chinese)というもので全体の3分の2なのですが、「香港人であってそれ以外ではない」(just Hong Kongers)という人が26.8%にものぼり、これは1998年以来最高の数字なのだそうです。

ことしの6月に同じような調査が台湾の国立政治大学(National Chengchi University)によって行われているのですが、自分が台湾人(Taiwanese)であると答えた人は60.4%、馬英九氏が総統に選ばれた2008年のころの50%を上回っている。また「台湾人であり中国人でもある」(both Taiwanese and Chinese)と答えた人は32.7%で、「かつてない低い数字」(a new low)であったそうであります。

台湾で馬総統が不人気なのは景気が悪いことへの不満の現れであり、香港の学生の反乱は中国の支配に対する反感というわけで、香港と台湾では事情が違うという声はもちろんある。さらに中国当局などは英米のような「敵意ある外国勢力」(hostile foreign forces)が騒乱を煽っている非難してもいる。

が、The Economistによると、両方の若者たちの不満には極めて似ている点もある。それは中国との経済的な結びつきが増えることで、本国の中国人たちが自分たちの職を奪ってしまうということ。また中国本土からの投資が増えたおかげで土地の値上がりが起こっており、これが庶民の手には届かないようなレベルにまでなっていることもある。台湾では若者(20~24才)の失業率が14%にまでのぼっており、職を見つけたとしても賃金が極めて低いものばかり。その一方で中国との経済的な結び付きによって一部のエリートだけが裕福になっている・・・などなど。

で、中国はどうしようとしているのか?6月には「国務院台湾事務弁公室主任」という立場にある張志軍という高官が台湾を訪問、野党の幹部らとも会談するなど、中国側に「軟化」(magnanimity)の雰囲気が見られるとThe Economistは言っている。香港についていうと、人民日報の国際版である『環球時報』(Global Times)が最近の社説で、

本土(中国)は(香港における)不安定な状態に安易に軍隊で対処しようとするべきではない。そうすることで一時的な平和は得られるかもしれないが、(不安定の)要因そのものは根深く残ってしまうことになるであろう。

The mainland shouldn’t be tempted to quell the unrest with troops too easily. It can only bring temporary peace, but the deep-rooted cause will still linger.

と述べている。The Economistはこの論調をもって「香港における不平・不満の根源に対処しなければならない」(the roots of discontent in Hong Kong must be addressed)という認識が北京政府にあるのではないかと言っています。

 

2014年12月15日 up date

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