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賛助会員 春海 二郎
(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)
7月22日付のGuardianに、ウクライナにおけるマレーシア航空機撃墜事件に関連して”my error of judgment”(私の判断ミス)という変わったタイトルの記事が出ています。書いたのはスカイ・ニュースというテレビ局のコリン・ブレイザー(Colin Brazier)記者。何が「判断ミス」だったのかというと、マレーシア航空機撃墜事件の現場からの生中継の際に、付近に散らばっていた犠牲者の遺品と思われるものに手を触れて「ほらこんなものまで・・・」という感じのレポートをやってしまったということ。その場面が放映された途端に彼のツイッターや局のメールボックスに「不謹慎だ」という抗議のメッセージが殺到してしまったというわけです。
ブレイザー記者は王立テレビ協会(Royal Television Society)によって今年のベスト・キャスター賞を受賞したようなベテランのテレビ・ジャーナリストなのだそうです。
あの事故を現場中継するために派遣されたコリン・ブレイザーが墜落現場で目にしたものは、散乱する死体だらけで、中継にあたっては死体だけは写さないようにしようとカメラマンと打ち合わせていたのですが、「遺品を撮影するのはいいのでは?」ということになった。
というわけで遺品の近くに立って中継を始めたブレイザー記者がかがみこんで「ほらこんなものが」という感じの中継をする中に子供用の水筒のようなものがあった。今年6才になる彼の娘がもっているものとそっくり同じものだったのですが、思わずそれを鞄のようなものから取り出して手に持ってしまった。
こんなことやってはいけないんだ。これは間違いだ・・・。
We shouldn’t be doing this … this is a mistake…
という言葉が思わず口をついて出てしまったのですが、時すでに遅しで、自分のとった行動を「禿鷹ジャーナリストの典型的行動」(what I did as a powerful example of journalistic vulturism)と見なそうと決めてかかっている人びとの餌食になってしまったというわけです。