講演依頼、コラム執筆、国際交流企画など、ご相談は無料です
賛助会員 春海 二郎
(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)
5月17日付のThe Economistが安倍首相が推進する「集団的自衛権」に関連して社説を掲載しています。イントロは
日本の首相が日本を非戦主義から引き離し始めたことは正しい。
Japan’s prime minister is right to start moving the country away from pacifism
となっている。
この社説は、安倍さんが不用意な靖国参拝などを行ったおかげで、近隣諸国が日本が掲げる非戦主義にも疑惑の目を向けていることは当然の部分はある。が、それでも5月15日に安倍さんが集団的自衛権の行使を容認して同盟軍の支援に積極的になろうとしていること自体は「国を正しい方向に動かそうとするものだ」(move the country in the right direction)と評価しており、
安倍首相による新しい提案が活発な外交活動を伴う限りにおいては(東アジアの)地域の安全を低めるのではなく、より高めるものになるであろう。
So long as they are accompanied by energetic diplomacy, they should make the region more, not less, secure.
と言っています。
The Economistは、戦後の日本は東アジアに平和と繁栄をもたらすことで、「模範的な地球市民」(model global citizen)となってきたのであり、
多くの日本人にとって、この憲法は単なる誇りの源であるだけでなく、国宝でさえあったのだ。
For many Japanese, the constitution is not just a source of pride. It is a national treasure.
と言いながらも、最近の北朝鮮や中国の動きを見ると、日本のやり方は時代遅れの観を呈している(looking out of date)ことは否めないとしています。
中国は日本の軍国主義の復活を非難するけれど、自分たちは軍拡を進めており、日本の意図についての中国の誤解は「ほとんど意図的」(almost wilful)にさえ見える。国連による平和維持活動を除いては日本が自分の海域の外へ軍隊を派遣することなどあり得ない(no question)ことであり、この程度の小さな方針変更でさえ国民を納得させるために安倍首相が往生していることからしても、日本に好戦的な意図があるとはとても思えない・・・とこの社説は主張している。
が、そうは言っても戦争中の日本の行為がもたらした破滅のせいもあって、近隣諸国との関係も極めて厳しいものがある。従って・・・
安倍首相による提案が(地域の)安全を損なうのではなく、高めるものにしようとするのであれば、安倍さんは近隣諸国に対して、日本の意図は限定されたものであるとともに善意に基づくものなのであって軍国主義復活への第一歩などでは決してないということを説得しなければならない。
If they are to enhance rather than undermine security, Mr Abe must reassure the region that Japan’s intentions are limited and well-meaning, not the first step in a militarist revival.
というのがこの社説の結論です。