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国際問題コラム「世界の鼓動」

キャメロンの「女性問題」!?

賛助会員 春海 二郎

(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)

2月10日付のファイナンシャル・タイムズ(FT)のサイトに

女性抜きのキャメロンは負け戦を戦っているのと同じ

Without women, David Cameron is fighting a lost cause

という見出しのエッセイが出ています。書いたのは左派系週刊誌、New Statesmanのヘレン・ルイス(Helen Lewis)編集長。エッセイの趣旨はキャメロンが党首を務める保守党にはもっと女性が必要だということなのですが、2月5日の下院におけるエド・ミリバンド労働党党首とキャメロン首相のやりとりにインスピレーションを得ている。

英国下院(House of Commons)のサイトにHansardというコーナーがあります。議事録ですね。その日に行われた審議のいろいろが速記録として文字で読むことができる。ちょっと可笑しいのは、発言中のヤジがうるさくて聞こえない場面が結構あり、そのたびごとに議長が「静粛に・静粛に(order, order)」と割って入り、場合によっては特にヤジがうるさい議員を名指しで「アンタ、いい加減にしろよ」という注意を与えたりしている言葉まで忠実に再現されていることです。

で、2月5日のやりとりですが、まずミリバンド党首が

首相は、2014年には女性の社会的平等に向けて指導的な役割を果たしたいと述べていますが、保守党内の女性の平等はどうなっているのか?

The Prime Minister said that in 2014 he was going to lead the way on women’s equality. Can he tell us how that is going in the Conservative party?

と質問する。

これに対してキャメロン首相は、女性の平等が「わが国にとって素晴らしくも重要な問題だ」(fantastically important for our country)と前置きしたうえで

自分としては女性の議員が17人から48人にまで増えた党のリーダーであることを誇りに思っているが、もっと増やさなければと思っている。

I am proud of the fact that while I have been leader of the party the number of women Conservative MPs has gone from 17 to 48, but we need to do much more.

と答える。さらに自分が首相になってから働く女性の数がかつてないほどに増えている、1100万の女性のために減税もやっている、年金支給における女性差別を廃止した・・・いろいろやっているではないかというわけです。その後、議場内がヤジのうるさい状態が続く中でキャメロンが放った次の言葉がさらなるヤジを招くことになる。

ひとこと言っておきたい。それは、保守党こそが女性の首相を生んだ政党である事実であります!

Let me make this point: this party is proud of the fact that we had a woman Prime Minister!

これに対するミリバンド党首の反応は:

首相はサッチャー夫人のことを述べたけれど、(キャメロン)首相と違ってサッチャー夫人は保守党の党首として何度も選挙で勝っています。

The right hon. Gentleman mentioned Lady Thatcher. Unlike him, she was a Tory leader who won general elections.

というものだった。確かにサッチャーさんは1979年、83年、87年の3回、保守党を率いて選挙で勝っており、キャメロンは2010年の選挙で単独過半数をとることができなかったのだから、ミリバンドの言うことは事実には違いない。が、国会における党首討論とも思えない揚げ足取りのようなやりとりです。それとサッチャーさんは女性首相・党首であったかもしれないけれど、彼女が首相の座にあった11年間で女性の閣僚はたった一人だけだったのだから、キャメロンがサッチャーを持ち出すのは失策だった、とヘレン・ルイスは指摘している。

英国における次なる総選挙は、2015年5月7日に行われることに決まっているのですが、今のところの支持政党に関する調査では大体において労働党が有利となっており、特に女性有権者の間では約10ポイント差で保守党がリードを許している。

有権者の半分である女性に対して、女性のことを真面目に考えていると納得させようと思えば、キャメロンがやっているように、単に自分が女性の味方(フェミニスト)であると言っているだけでは充分ではない。言葉は政策や閣僚への(女性の)起用によって支えられる必要がある。

It takes more than calling yourself a feminist, as the prime minister does, to convince half the electorate you take women seriously. You have to back it up with policies and promotions.

とヘレン・ルイスは言っている。現在の内閣には女性の閣僚が4人いるのですが、ルイスによると、保守党は女性閣僚の存在を「我慢して受け入れるべき存在」として扱っている。現在のところ労働党の全議員(255人)のうち31%(86人)が女性であり、14人が影の内閣の閣僚として登用されている。304人中48人の保守党とはだいぶ違う。

「女性問題」もさることながら、現在の保守党にとって頭痛のタネとなっているのが年代ギャップです。保守党員の数は年々減っており、党本部の発表では約13万人とされている。ヘレン・ルイスのエッセイによると保守党員の平均年齢は68才。なのに保守党の国会議員になろうかという活動家には30~40代が多い。例えば同性愛者の結婚とかワーキングマザーの福祉のようなハナシになると、党員と立候補者の間でかなりの意見の隔たりが出てくる。キャメロンが39才で党首になったのは2005年、それ以来党員の数が激減、本当は10万人を切っているのではないかとも言われている。つま若い党員を増やさない限りり保守党に未来はないということになる。

2014年2月23日 up date

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