NPO法人 アジア情報フォーラム

お仕事のご依頼・お問い合わせ

講演依頼、コラム執筆、国際交流企画など、ご相談は無料です

国際問題コラム「世界の鼓動」

今でしょ『Z』旗一杯!

古庄 幸一(理事)

横須賀新港(三笠公園)の記念艦「三笠」は、帝国海軍が英国ヴィッカース社に発注し、1900年(明治33年)バロー・イン・ファーネス造船所で進水。東郷平八郎大将が指揮した聯合艦隊の旗艦として、1905年5月の日本海海戦でロシア、バルチック艦隊と戦った戦艦である。ほぼ完全に復元された「三笠」は、現在艦首を皇居に向け、日露戦争当時の資料を艦内に展示した体感型歴史記念艦として、毎日午前8時から日没までの間艦尾に軍艦旗を掲揚し、かっての威容を保ち保存されている。

5月27日にこの記念艦「三笠」艦上で、日本海海戦108周年記念式典が挙行され出席した。式典は立ち席の人がいる程多くの出席者があったが、何故か政界や財界からの出席者はなく子供達の声も聞けなかった。参加していた英国の友人から、「我が国のトラファルガー沖海戦記念日と同じと思うが、何故国家的行事として行われないのか」と質問を受けた。私は我が国の戦後歴史教育は、何者かに媚びた日本人が自ら日本の歴史を軽視し、正しく教育せずに嘲る風潮にあったことを説明したが、彼は理解できなかったようだ。

今日世界には多くの海軍艦艇が記念艦として保存されている。そのほとんどは現役の軍艦として海軍士官が艦長の配置に就き、乗組員は整備や見学者の案内等に当っている。最も著名な記念艦は、英国ポーツマス軍港の戦列艦「ヴィクトリー」であろう。日本海海戦の100年前1805年、ホレーショ・ネルソン提督が座乗し、トラファルガー沖海戦においてフランス・スペイン艦隊と戦った英国艦隊の旗艦だ。指揮官・旗艦の在り方として、ネルソン提督・「ヴィクトリー」は常に東郷元帥・「三笠」と比較されている。ネルソン提督は「英国ハ各員ガソノ義務を尽ス事ヲ期待スル」との有名な信号旗を「ヴィクトリー」に掲揚し、ネルソンタッチと言われる戦法で圧勝するがこの海戦で戦死する。一方ネルソン提督をこよなく尊敬していた東郷元帥は、日本海海戦で「皇国ノ興廃此ノ一戦ニ在リ。各員一層奮励努セヨ」を意味する「Z」旗一旈を「三笠」に掲揚し、丁字戦法でロシア艦隊を撃滅した。自国の命運を掛けた海戦のこれら記念艦は、古今に通じて広く語り伝えなければならない誇りと偉大な象徴である。東郷元帥がネルソン提督と唯一違ったのは、東郷元帥は戦死せず神格化され昭和9年までご存命であったことだろう。

1 2
2013年9月11日 up date

賛助会員受付中!

当NPOでは、運営をサポートしてくださる賛助会員様を募集しております。

詳しくはこちら
このページの一番上へ