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国際問題コラム「世界の鼓動」

シリア:アサドに懲罰の一撃を!

 

賛助会員 春海 二郎

(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)

 

このむささびジャーナルが出るころにシリア情勢がどうなっているか分からないけれど、9月1日付のBBCのサイトのトップニュースの見出しは

Syria crisis: Obama delay could ‘embolden’ Assad

というものだった。このまま訳すと

シリア危機:オバマ大統領の決定延期はアサド大統領に力を与える可能性がある

ということになる。シリアへの軍事介入を望むアメリカか英国の政治家の発言かと思ったらシリアの反大統領派幹部の発言だった。つまり「さっさとアサド攻撃に踏み切ってくれ」と言っている。

この際、シリア爆撃についての賛成意見と反対意見の典型と思えるものを一つずつ紹介してみます。まずは軍事行動賛成のThe Economist誌8月31日付の社説から。この雑誌を「英国の」メディアに入れていいのかどうか疑問がなきにしもあらずですが、とりあえず発祥が英国であるということで紹介することにします。で、この社説ですが、まず

Hit him hard(アサドに強烈な一撃を)

と言ってから次のようなイントロが続いています。

Present the proof, deliver an ultimatum and punish Bashar Assad for his use of chemical weapons

証拠を提出し、最後通牒を与え、アサド大統領に罰を与えよう。彼は化学兵器を使ったのだ。

The Economistによると欧米の取るべき道は次の三つのうちのどれかであります。

  1. 何もしない。
  2. アサド大統領およびその政権を追放するという明確な目的を持って持続的な攻撃(sustained assault)を加える。
  3. この独裁者が化学兵器を使用したことへの罰として短期間ではあっても強烈な一撃を与える。

これらの選択肢のうちベストなのは選択肢3、即ち短期間にアサド政権にとって致命的となるような爆撃を加えることで、化学兵器を彼らの手から取り上げ、しかも「もう二度と化学兵器など使うまい」と思わせるような強烈な一撃を加えることである、とThe Economistは言っています。

選択肢1の「何もしない」というのはアサド大統領のような独裁者に対して化学兵器を使っても大丈夫だと思わせることになり、事態がさらに悪化する。それから選択肢2はアサド追放まで攻撃を続けるというのですが、The Economistによると、アサド政権がかつてよりも強化されているだけでなく、反対派の中でイスラム過激派が勢力を伸ばしてきており、選択肢2をとると、結果としてイスラム過激派の反アサド闘争を支援することになってしまう可能性がある・・・というわけでこれもアウト。

選択肢3については具体的にいうと、例えばアサド大統領一派が指令塔として使っているような場所や建物に対して、一週間連続で爆撃を加える、あるいは彼の宮殿そのものに爆撃を加える・・・このような攻撃を徹底しても、それだけでアサド追放ということはできないかもしれないけれど、反対派を大いに勇気づかせ、アサド大統領を交渉のテーブルに引きずり出すことに繋がるかもしれない。あるいはそれでもアサド大統領が白旗をあげることはないかもしれない。そのような場合は・・・

彼には極力、情け容赦を与えるべきではない。まさに彼自身が自国民に対して行ったと同様に情け容赦のない仕打ちを行うべきである。もしアメリカのミサイルがアサド大統領本人に命中しても構うことはない。悪いのはアサド大統領とその一派なのであるから。

He should be shown as little mercy as he has shown to the people he claims to govern. If an American missile then hits Mr Assad himself, so be it. He and his henchmen have only themselves to blame.

というのがThe Economistの主張です。かなり長い記事をはしょって紹介しました。原文はここをクリックすると読むことができますが、読めない場合は「むささび」宛てお知らせください。

2013年9月8日 up date

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