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国際問題コラム「世界の鼓動」

ここにもアフガニスタン戦争の犠牲者

賛助会員 春海 二郎

(筆者は長年、在日イギリス大使館に勤務し、イギリス関係情報を独自に発信するサイト「むささびジャーナル」の運営をしている)

 

一か月ほど前のBBCのサイトに、アフガニスタンでの軍事行動に従事した英国の兵士と退役軍人による自殺数が、軍事行動による英軍の死者数を上回ったというショッキングな記事が出ていました。BBCの看板ドキュメンタリー番組、Panoramaが伝えたものです。それによると、昨年(2012年)1年でアフガニスタンで死亡した英国人兵士の数は44人、うち40人が戦闘行動中に死亡している。一方、アフガニスタンの戦争に従事した現役軍人21人、退役軍人29人が自ら命を絶ってしまったのだそうです。つまりアフガニスタンの英国兵に関する限り「戦死」よりも「自殺」の方が多いということになる。

そのうちの一人、Dan Collinsという軍曹の場合、2009年にアフガニスタンの道路わきに仕掛けられた爆弾によって右足を失うと同時に親しくしていた友人が目の前で爆弾に吹き飛ばされて死ぬのを眼にした。それ以来、休暇で帰国中も悪夢にうなされるなどの症状が見られ、いわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断された。そして昨年の1月1日に自殺した。

BBCによると、アフガニスタンに駐留した英軍兵士の中で2012年の1年間でPTSDと診断された人の数は231人、2009年の数字は108人だったのだから3年で倍増したことになる。2001年に始まったアフガニスタン戦争ですが、先頭に従事した英軍兵士の数は134,780人、うち2013年4月末現在で444人が死亡しています。

戦争で死亡した兵士の名前や顔などの詳細がBBCのサイトで紹介されていますが、自殺した兵士は掲載されていません。また英国のスタッフォードシャーにある国立森林公園(National Memorial Arboretum)には第二次世界大戦以後の戦争で命を落とした軍人の名前が刻まれ鎮魂の壁があり、これには戦地で自殺した軍人の名前も入っている。ただDan Collinsのように帰国中に自殺したような場合は名前は刻まれないのだそうです。息子の名前が「鎮魂の壁」に刻まれないことについて、母親は「息子のダニエルは自分の名前がどこかに刻まれることでとても誇りに思っただろうに」として

PTSDの兵士だってほかの人と全く同じなのよ。彼らだって戦争の犠牲者なのだから、他の人と同じように扱われるべきですよね。

Soldiers with PTSD are exactly the same. They’re victims of war and they should be treated exactly the same.

と言っています。

2013年8月27日 up date

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