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国際問題コラム「世界の鼓動」

天皇ご訪中の回想――あの熱烈歓迎ぶりが懐かしい

両陛下が上海市中心街をご視察された際には、御料車に陪乗したが、御料車内から、歓迎市民とのご交流を拝察した情況について、心に残る光景を想起しつつ、紹介したい。 ご視察の行路は「南京路」の繁華街(当時は上海の歴史ある街路であったが、 現在は地域一帯が近代化されている)を始め、「大世界」の歓楽街 (改造前)など、市内でも超過密地域をご通過になられる。宮内庁からは、「中国の民衆とお触れ合いになれる折角の機会であり、警備上の問題はあろうが、両陛下が市民の 歓迎に心からお応え出来るよう適宜スピードを下げるように配慮願いたい」との要請があり、優秀な上海公安の警備を確信して躊躇なくお引き受けした。

黄菊市長の歓迎晩餐会に続いてホテルをご出発、両陛下には沿道で待つ歓迎市民に向かって、丁寧にお手を振り始められる。ライトアップされた南京路が 近付くにつれて、道路の両側から押し寄せる歓迎市民を、懸命に規制する警備 員たちの姿が目撃される。 南京路に入ると、規制ラインぎりぎりまで押し寄せる市民の表情は明るく、 車窓には笑顔が映っては消えて行く。

「ホワンイン、ホワンイン(歓迎、歓迎)」 の高まる大歓声と拍手、拍手。警備員の肩越しに身を乗り出して手を振る若者 たち、わが児を高く抱え掲げて手を振らせる父親の様子は、微笑ましい。両陛下は一時もお手をお休みにならずに、お応えになられる。 御料車の窓から歓迎市民の様子を観察すると、南京路の左右で待つ幾層もの 市民の表情は誰もがにこやかで、心からの歓迎を表わす思い思いの気持ちが伝わってくる。両陛下の御心も市民の一人一人に通じている様子がうかがえ、拍手と歓声が上がるたびに感動を覚えた。

南京路を抜けると前方の黄捕江対岸に、開発中の浦東地区のビルやネオンが目に入る。その前の遊歩道で待つ多数の歓迎市民の歓声が夜空にこだますと、 陛下には市民に向かって大きくお手を振られてお応えになる。車中でのお姿が見られるように、車内灯をお点けになられると、一段と大きな歓声が湧き起こる。

何と素晴らしい自然な友好交流の情景だったことか。

その夜のために黄哺江に沿った二十世紀初頭の西洋風建築群が、華麗にライトアップされていた。チベット路に近付くと、幾重にも道一杯に押し寄せる人波 が行く手を阻むように見え、御料車が多数の市民が待つ「大世界」の前をゆっくり通過すると、人垣から一斉に歓声が起こる。 車列が左に大きくカーブした時、後方から「ニイハオ! ニイハォ!」 と叫ぶ大きな声が聞こえ、車窓から上半身を乗り出して大きく手を振られる渡邊美智雄首席接伴員 (外務大臣)の姿が見える。これに応えるように「ホワンイン! ホワンイン!」 の大合唱が響く大群衆の光景が、今でも目に浮かぶ。

延安路に出る道幅はさらに狭くなり、窓外近くに現れる市民と一見握手でもなされておられるように見える。御料車の速度計が10キ ロを切るところでスピードを戻し、静寂な夜道に入る。25キ ロの全行程を予定より大幅に遅れてご宿舎の 西郊賓館にご到着になられた。

1時間余の市内ご視察を顧みると、思い思いに行路で待ち受けた30万人もの 上海市民が、各所で見せた多種多様の歓迎振りは本当に自然で、まさに感動の連続であった。そうした市民の大歓迎の中を、両陛下には御料車を徐行なされて進み、終始慈しみある笑顔で、ご親睦にお尽くしになられる両陛下の御心と歓迎市民の気持ちが溶け合って、信じ難い光景となった。

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2013年8月4日 up date

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